このシリーズ連載「韓国の道民性」では、日本のみなさんが “推し” や、ドラマや映画のキャラクター理解を助けるような材料を提供するため、我が国の道民性について語っている。

 今回は全羅道の人々を知るためのエピソードを紹介しよう。

韓国の南半分の西側(左側)が全羅道。東側(右側)が慶尚道済州で出会ったタクシー運転手さんの話によれば、この2地域の人々には明確な違いがあるという
1990年代後半にキム・デジュン大統領が誕生するまで、政治的には慶尚道が圧倒的強者だった。パク・チョンヒ慶尚北道の亀尾出身。チョン・ドゥファン慶尚南道の陜川出身。ノ・テウは慶尚北道の達城郡出身。キム・デジュンは全羅道の新安出身、ノ・ムヒョンとムン・ジェインは慶尚南道の金海と巨済出身だが、支持基盤は全羅道

筆者の道民性に関する著書『韓国「県民性」の旅』

■韓国全土からの観光客と接してきた済州のタクシー運転手さんの話

 私は2007年から2008年にかけて、『韓国「県民性」の旅』という本の取材で全国を回っていた。

 ソウルから南下しながら各道を取材し、最終目的地・済州道でタクシーに乗っているときのこと。

 筆者「済州には全国各道から観光客が来るでしょう。それぞれの個性を感じることはありますか?」

 運転手さん「ありますよ。慶尚道と全羅道は全然違います。お客さんを乗せて観光スポットを回るんですが、目的地に着くと『はい降りますよ~』という調子で記念写真だけパッと撮って、『はい、運転手さん次のとこへお願いします』って感じなのが慶尚道の人。まあ、運転手兼ガイドにとってはラクなお客さんなんですが、ちょっと物足りなくもありますね。

 一方、全羅道の人は、知的好奇心が旺盛というか、あれこれ質問してくるし、景色を見るにしてもじっくり鑑賞する印象です」

 運転手さんのざっくりした印象なのだろうが、すべての道の人たちと車内という個室で言葉を交わす機会の多い人の言葉だけに、説得力がある気がした。