■船内ディナーは映画『ひと夏のファンタジア』の舞台の名物、柿の葉すし

 じつは大阪・釜山を結ぶパンスタードリーム号に乗るのは2回目だ。

 前回は12年前の夏。あのときは夕食(韓食バイキング)のあと、食堂で釜山が舞台の映画『TSUNAMI-ツナミ-』(2009年、ソル・ギョングハ・ジウォン主演)を観たと記憶している。隣で在日コリアンの友人が人目もはばからず涙をぽろぽろこぼしていて、朝鮮半島の人の血の熱さに感じ入った。

 船内での夕朝食はバイキングを利用することもできるが、前回食べたので、今回は近鉄百貨店で買った柿の葉すし(2日以上もつので旅向き)と白ワインを持ち込んだ。柿の葉すしは奈良県五條市の名物。五條市はキム・セビョク&岩瀬亮主演の韓日合作映画『ひと夏のファンタジア』(2015年、チャン・ゴンジェ監督)の舞台である。岩瀬亮扮するユウスケはまさにその柿農家の青年だった。

夕食は映画『ひと夏のファンタジア』の舞台、奈良県五條市の名物「柿の葉すし」

 その夜は、ロビー前のレストランでプロのエンターテイナーや乗船スタッフによる歌や踊りを楽しむことができ、退屈しなかった。

■釜山港では巨大なクジラがお出迎え

 パンスタークルーズ号は瀬戸内海と関門海峡を抜け、対馬を左手に見ながら北上して釜山港に向かう。玄界灘が荒れる冬は揺れが心配だったが、たいしたことはなく熟睡できた。

 9時頃甲板に出ると、遠くに釜山の街がうっすら見えている。ソウルは3年2カ月ぶりだが、釜山は3年8カ月ぶりだ。待望の韓国再訪が釜山上陸から始まるというのもおもしろい。

 今回は2015年秋にオープンした釜山港国際旅客ターミナルに接岸する。よくここのテラスから出船入船を撮影したが、その船に自分が乗っているというのが単純にうれしい。

2015年秋、完成したばかりの釜山港国際旅客ターミナルから撮影したパンスタードリーム号の雄姿

 前回は旧ターミナルに接岸した。シドニーのオペラハウスにも似た外観を覚えている人もいるだろう。映画『10人の泥棒たち』(2012年)のキム・ユンソクの銃撃戦シーンが撮影された場所である。

パンスタードリーム号の船上からクジラを模したデザインの釜山港国際旅客ターミナルを望む

 パンスタードリーム号が釜山港大橋に接近する。この橋は『D.P. -脱走兵追跡官-』3話でチョン・ヘインク・ギョファンがオープンエアの観光バスで渡ったところだ。橋をくぐるとターミナルの全容が見えてくる。それは『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の主人公(パク・ウンビン)の心の支えだった鯨の姿をしていた。

 いよいよ釜山上陸だ。

(つづく)