K-ETAはコロナ禍の残影といってもよかった。韓国は水際対策として、感染が収まりはじめた頃、渡航希望者にビザを義務づけた。韓国大使館にビザ申請の長い列ができたことを覚えている人もいるかもしれない。連日、韓国に行きたい人が徹夜で並んだ。
その後、徐々に入国規制が緩和されるなかで登場したのがK-ETAだった。アメリカ同様、ある種のビザ機能とスムーズな入国審査の手段だった。
僕はK-ETAを取得した状態で3回、韓国に入国している。イミグレーションでK-ETAを取得していることを伝えるわけでもなかった。一応、記録をプリントしておいたが、使うことはなかった。おそらく入国審査ブースのモニターには、K-ETAで登録した内容が表示されているのだろうが、それは僕が見ることはできない。入国審査が前より早くなったとも思えなかった。
ビザ機能はさらにわからなかった。ビザは両国の相互協定で決まる。平等が原則だが、なかなかそうはいかない。
たとえば、日本人がバングラデシュに行くときは空港でビザがとれるが、バングラデシュ人が日本にくるときは、事前に在バングラデシュの日本大使館に出向いてビザをとらなくてはならない。タイ人は日本に入国するとき、15日以内ならビザが免除される。日本人はタイにいくとき、これまでは30日~45日間はビザなしで滞在できた。
ビザというものの背後には、国と国間のパワーバランスがある。
コロナ禍前、日本人が韓国に行くときは90日以内ならビザが免除されていた。同様に韓国人も90日以内の日本滞在はビザをとる必要はなかった。平等だったわけだ。
新型コロナウイルスの感染が広まり、両国は入国規制を行っていったが、日本は韓国人へのビザについては変更しなかった。対して、韓国は日本人に対してビザを課すことにしたため、K-ETAというのは、ある種の不平等状態のなかの制度だった。
K-ETAの免除で、日本と韓国の行き来は平等になった。ようやく、入国条件という面でコロナ禍は終わったということだろう。