■『愛の不時着』の名場面に登場した国宝の七層石塔

 配信ドラマ人気の火付け役となった『愛の不時着』。第12話にユン・セリソン・イェジン)のもとに、リ・ジョンヒョクヒョンビン)の部下たちが訪れ再会を果たすという感動の場面がある。

 その背景に七重の石塔が見えるのを覚えているだろうか?

 このシーンの撮影が行われたのは韓国中北部の忠州(チュンジュ)バスターミナルから北西へバスで30分ほどの場所にある「中央塔史跡公園」。

 8~9世紀に建てられたと推測される「塔平里(タッピョンニ)七層石塔」(国宝第6号)は、統一新羅時代に国の中央に建てられたことから中央塔とも呼ばれている。

『愛の不時着』をはじめ韓国ドラマに登場する塔平里七層石塔のある忠州中央塔史跡公園

 ここではソン・ジュンギ主演の『ヴィンチェンツォ』やチョ・ボアユ・スンホ主演の『ボクスが帰ってきた』の撮影も行われた。

 忠州は、道庁所在地の清州チョンジュ)に次いで、忠清北道で2番目に人口が多い都市。市の中央に南漢江が流れており水路・陸路ともに交通の便にも恵まれたため、三国時代には百済高句麗・新羅が熾烈な領土争いを行ったという歴史がある。

 また、統一新羅時代には中原京という副都が置かれ、芸術文化の中心地でもあった。

 中央塔史跡公園内には「忠州博物館」もある。2棟の館内展示と野外展示があり、仏教美術や民俗品の展示、先史から近代までの中原文化圏の遺跡や遺物が展示されている。

 南漢江に沿ってさらに北上すると、「忠州高句麗碑展示館」がある。

 高句麗第21代文咨明(ムンジャミョン)王の時代(491~519年)に建てられたと推測される「高句麗碑」(国宝第205号)が展示されている。

 三国時代に高句麗が漢江以南に進出していたことを立証する、韓国で唯一発見された高句麗の石碑として大きな意義を持つ。しかも、5世紀の高句麗と新羅の関係、三国の文化的交流があったことなどが刻まれており、三国時代の貴重な史跡といわれている。

韓国で唯一発見された高句麗碑は高句麗が漢江以南に進出していたことを立証する貴重な史料