韓国の全自治体162市郡(当時)を踏破した小暮真琴と、韓国関連書籍を多数執筆する康熙奉(カン・ヒボン)が韓国旅行の醍醐味を語り合うスペシャル対談。第2回は全羅(チョルラ)北道です。
■全羅北道は食材の宝庫、韓国ドラマや映画のロケ地巡りも楽しめる
康 韓国の南西部に位置する全羅北道は、道庁所在地が全州(チョンジュ)ですね。
小暮 私が韓国地方旅を始めるきっかけとなったのが、2009年に全州を訪問したことだったので思い入れが深いんです。全州の観光スポットといえば全州韓屋村(ハノンマウル)。中でも朝鮮王朝時代に建てられた慶基殿(キョンギジョン)と全州郷校(ヒャンギョ)は『赤い袖先』や『シュルプ』といった歴史ドラマに登場します。
康 あの二つの作品は近年まれにみる傑作。全州でロケをしたというのもバッチリですね。
小暮 全州はさらに『二十五、二十一』のロケ地としても注目されましたね。
康 ナム・ジュヒョクとキム・テリが演じた主人公カップルが何度も歩いていた「思い出のトンネル」が目に焼き付いています。私の人生史上、最も心を射抜いたトンネルです(笑)。
小暮 全羅北道のある湖南平野は、韓国最大の穀倉地帯で美味しいお米が収穫されるのをはじめ、「食の都」と呼ぶにふさわしいほど食材の宝庫ですよね。特に西部には西海(ソヘ)に面した海岸線が広がっています。群山(クンサン)、扶安(プアン)、高敞(コチャン)では、遠浅の海で水揚げされる海産物を使ったいろんなグルメも楽しめますよ。
たとえば、港町の群山では、生きたままのワタリガニを韓方薬剤と共に醤油ベースのたれに漬け込むカンジャンケジャンが有名です。
康 聞いているだけでヨダレが出てきますね(笑)。
小暮 群山は、映画『八月のクリスマス』に登場した草原(チョウォン)写真館(復元)があり、映画をきっかけに訪問する人が多いです。
康 永遠の名画ですね。シム・ウナの可憐な表情が忘れられません。なぜ早く引退してしまったのか。メチャ悔しいです(笑)。
小暮 私も大好きな映画でした。群山には日本統治時代の建物が数多く残されていて、銀行だった建物を利用した美術館や展示館、移築した日本家屋をリノベーションしたカフェや食堂、ゲストハウス、韓国に唯一現存する日本式寺院の東国寺(トングクサ)など、観光しながら近代史を学ぶことができますよ。
康 群山には鉄道に乗ることだけを目的に行ったことがありますが、細かく観光をしませんでした。惜しいことをしました。見どころがたっぷりあったのに……。