■ジモティに愛される茹で豚専門の100年食堂

 ここから釜山駅方面へ坂を降りていくと「平山屋(ピョンサノク)」という食堂がある。Korail釜山駅からなら、10分ほど坂を上った場所だ。「草梁1941」と同じくこの店の歴史は長く、創業100年の老舗食堂である。

 客の誰もが注文するスユッ(スユク、茹で豚)は、1人前1万ウォンと懐に優しい。小皿にたっぷりと盛り付けられた厚みのあるスユッは、ほんのり温かく食欲をそそる。

 柔らかく煮込まれた赤身部分もいいが、脂身の甘さがたまらない。細切り大根の唐辛子和え、ニラの和え物、白菜キムチが添えられていて、スユッに載せて食べるとたまらない。

 特筆したいのが特製ソースの味だ。味噌、辛子、粉唐辛子、酢の風味とリンゴや梨などフルーツの甘さを感じた。店主にソースの材料を教えてほしいと頼んでみたが、「企業秘密」だと一蹴された。これぞまさに秘伝の味だ。

「平山屋」で誰もが注文するスユッ(茹で豚)は肉の美味しさもさることながら、特製ソースが絶品で肉のうまみを引き立ててくれる

 後から来た常連の男性3人組が、メニューにはない何かをオーダーした。すかさず店のアジュンマに「あれは何か」と尋ねたところ「ユクス」との返事。

 ユクスとはスユッを茹でたときの出汁で、メニューにあるククス(温かい)にも使われているそうだ。釜山の焼酎C1との相性もピッタリ。ユクスをリクエストした客には、サービスで提供しているという。その心意気がすばらしい。

「草梁1941」と「平山屋」、どちらも末永くその味と歴史を守り続けてほしい。

サービスで提供されるユクス(豚の茹で汁)は釜山の焼酎C1のアテにピッタリ