極め付きはエンディングだ。橋の上で1人涙を流すドギムを目にしたサンは、「いっそ私のせいで泣け。私の前だけで泣け。これは命令だ」と告げる。
「お前が泣くと、私の胸が痛む。耐えられぬほどに」
そう口にしてしまうほど、何度ドギムに拒まれようが、心の中から完全に追い払うことができないサン。涙を流す彼女の頬に触れようとするも触れられず、去ろうとするサンの袖先を、ドギムがついに掴むのだ。
王の赤い袞龍袍(コンリョンポ/コルリョンポ)とドギムの赤い袖先が重なる美しい場面。思わずドギムを抱きしめるサンにこちらまで感極まってしまう。
ちなみに、本作の演出を手がけたチョン・ジイン監督が、印象的だった場面のひとつとして上げているのが、15話エンディングでサンとドクイムの橋の上でのやり取りだ。
「台本でイメージしていたものより、実際に撮ってみるとよりよくなる場合が多くありました。なかでも15話の橋の上でのシーンは、ドギムがサンの袖を掴むところまで台本ではとても長く描かれていました。2人の感情の動きを考えると、もっと早くドギムがサンを引き留めたほうがいい。そう思って、あらかじめ脚本家に、台本を短く整理してもいいですかと断りを入れていたんです。
ですが、リハーサルで一度やってみたら、長く感じられなかった。むしろ二人のやり取りは流れがよく、感情の伝え方もベストだと思いました。それで、そのまま行きましょうとなった場面です。
撮影はちょうど寒くなり始めた時期で、スタッフ皆はジャンパーを着ていましたが、ジュノさんとセヨンさんはあの衣装で寒かったことだろうと思います。よく見るとジュノさんの耳が真っ赤になっているんですが、あれは寒さのせいだと思います。頑張っていいシーンを演じてくれてことに感謝しています」(チョン・ジイン『韓国TVドラマガイド』インタビューより)。
そんな裏話を知って見ると、またぐっとなる場面だ。
補足となるが、劇的な展開のある第15話は、原作小説の中巻の内容が1話に凝縮して描かれているといっていい。和嬪に仕えるドギムの人としての賢さが伝わるエピソードが満載で、面白い。
原作と大きく異なるのは、ドギムが王宮を去ったのち、一時的に仕えていた屋敷は、サンの庶弟・恩彦君(ウノングン)宅となっている点。サンの父・思悼世子(サドセジャ)がどんな人物であったか、サンと父との関係が、より詳細に描かれているので、あわせて読んでみると世界観が深まるだろう。
●作品情報
『赤い袖先』
[2021年/全17話]※TV放送は日本編集版の全27話
演出:チョン・ジイン、ソン・ヨナ 脚本:チョン・ヘリ
出演:ジュノ(2PM)、イ・セヨン、カン・フン、イ・ドクファ
DVD&Blu-ray販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン