朝鮮王朝時代でもっとも波乱の人生を歩んだといわれる名君イ・サン正祖)。ロマンス史劇『赤い袖先』は、稀代の名君が生涯唯一愛したとされる宮女(のちの側室・宜嬪ソン氏)とのロマンスを、胸キュンと切なさの絶妙なバランスで描いている。

 主人公イ・サンを演じたジュノ2PM)の魅力が炸裂した本作は、テレビ東京で地上波初放送されるや反響を呼び、U-NEXTでも再生ランキング上位をキープ。そのクオリティの高さで日本でも熱い支持を受けている。

 そんな多くの視聴者を虜にした、王イ・サンと、彼に愛された宮女ソン・ドギム。気になる2人のロマンスを、各話ごとに解説する。(本記事はオリジナル版全17話をもとに紹介。TV地上波放送は日本編集版の全27話。※以下、一部ネタバレあり) 

■『赤い袖先』第16話「お前をもう手放さない」

●あらすじ

 宮女ソン・ドギムに嫉妬する王イ・サンの側室、和嬪(ファビン)は大妃に、ドギムが男に会っていたと伝える。男とは、実はドギムの兄ソン・シクのことだった。さらに、和嬪は大妃の前でサンにドギムの私通を訴える。だが、兄の立場を考えて否定しないドギム。

 大妃は宮女の私通は死罪だと脅し、サンにある取り引きを持ちかけるが、サンは拒否。ドギムを信じていると言い切るのだった。そこに、サンの母、恵慶宮(ヘギョングン)が現れ……。

●見どころ

 サンがついに心を決める。「なぜ欲するものを手に入れようとしない」と大妃に言われ続けた彼が。これが彼女との最後に日になるかもしれない覚悟で、真っ直ぐに求愛するサンに対し、ドギムも心を決め、2人の運命が大きく動く回だ。

 そこに至るまでの過程が、また痛快だ。はじめは側室・和嬪の訴えでドギムの私通が疑われるというハラハラの展開だが、サンは彼女の潔白を信じ続ける。

 とはいえ、大妃の「700人の宮女すべてが王のみ慕うと思うのか」という問いに、「他の男を慕うこともある」と弱気な受け答えになるサン。「あの者に限ってあり得ない」という言葉はサンの切なる願いであり、心のどこかで不安もあったのだろう。

 彼女の密会の相手が実兄だったと知るや、緊張に満ちていた顔が一気に崩れ、思わず笑みがこぼれるサンが可愛いではないか。加えて、和嬪の浅はかさが露呈し、彼女が苦境に立たされる流れは、実に溜飲が下がる。

 ちなみに、原作小説でも和嬪がドギムの私通を訴えたことをきっかけに逆転劇が始まるが、ドギムは自らの口で実兄であることを明かし、和嬪を追い込んでいく展開になっている。

 そして、意を決したサンは、ソ尚宮に「ソン・ドギムを今夜私の寝床に」と命じる。少しの迷いもなく。これまた胸がすくようだ。

 綺麗に身を清められたドギムをそっと抱き寄せたサンは、こう話す。

「私を恋い慕わずとも、お前は私のものだ。私以外の者に傷つけられるな」「お前に恋慕している」と。

 そこには彼女を大切に想う彼の真心があった。

「お前がどんな思いであれ、そばにいてほしい。この手を離すべきか」と、最後の判断を彼女に委ねるサンの言葉を受けて、彼の手を両手で握り直すドギム。彼女が出した答えに胸がいっぱいになる。

『赤い袖先』(C)2021MBC