ドラマでは冬の美しい風景が評判になり、白い世界も初恋の純粋さをよく表していた。しかし、厳寒期の撮影は苦労ばかりだったという。

「撮影は本当に大変でした。龍平(ヨンピョン)スキー場の場合はスキー客が多くて、ゲレンデがクローズとなったあとから撮影を始めなければなりません。まあ、夜の12時過ぎですよ。そんな時間ですから、たまらなく寒い。俳優たちも本当に苦労したでしょう。

 私も寒くてつらかったのですが、やたらと着込んで完全防備しましたからまだいいほうです。俳優たちはそうもいかないですからね。確かに寒さで震えていましたけれど、本番でそれを感じさせなかったのはさすがです」

 このドラマは名シーンの連続だった。その中で、ユン・ソクホ監督自身が最も満足しているシーンは?

「初恋をテーマに描いたので、やはり、ファーストキスの場面が一番好きですね。実は、最初の予定では夜の湖で撮影することになっていました。というのは、やはりキスの場面は夜のほうが、雰囲気が出ますからね。

 しかし、よく考えてみれば、初恋の純粋さを描くなら、白い世界のほうがふさわしいかな、と。それで午前の光が雪によく反射する時間を選んでファーストキスの場面を撮影することにしたのです」

『冬のソナタ』のストーリーの中で多くの人が違和感を持ったのは、交通事故で記憶を失ったチュンサンが再び交通事故で記憶を取り戻すという設定だった。そのことはぜひユン・ソクホ監督から経緯を聞いてみたかった。

「その設定は、私にとっても非常に心苦しいところです。一度は記憶を失ったチュンサンがどのように記憶を取り戻すかというのはストーリーの上でも難しいシチュエーションでした。いろいろなアイディアを出そうとしたのですが、結局は再び交通事故にあうという展開になりました。

 他の描き方はないだろうか、と模索はしたのですが、撮影スケジュールが迫ってしまって……。その点では惜しい気持ちがします。もっと撮影に余裕があったら他の方法になっていたかも。もはや時間がなかったので、再び交通事故にあうというストーリーになりました」

2004年当時の龍平スキー場に展示されていた『冬のソナタ』のパネル