■『新感染 ファイナル・エクスプレス』にも通じるKゾンビ群像劇
タイトルからは想像もつかないが、『ハピネス』は事実上のゾンビものだ。
Kゾンビは、2016年、韓国初の本格ゾンビ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(コン・ユ主演)から始まり、続編の『新感染半島 ファイナル・ステージ』(カン・ドンウォン主演)や、『#生きている』(ユ・アイン&パク・シネ主演)、『今、私たちの学校は…』(パク・ジフ主演)、『ゾンビバース』(イ・シヨン主演)など、多様化が進んでいる。
『ハピネス』は欧米のゾンビ映画や過去のKゾンビのよさを踏襲しながら、独自の工夫も感じられる。
そのひとつが、感染したあと一度症状が落ち着き、一時的に常人として生きられることだ。しかし、彼らがノドの渇きを感じ始めたり血を見たりすると、たちまちゾンビに戻るという設定が斬新だ。主人公らがそれを見極めようとするシーンにはドキドキさせられる。
また、感染の原因となるのが、栄養剤として普及していたクスリであるという点は、ウィル・スミス主演映画『アイ・アム・レジェンド』と似ている。安易に健康や美貌を手に入れようとする人間の横着さへのアイロニーだ。
隔離された高層アパートの閉塞感と危機的状況ではびこる利己主義は、『新感染 ファイナル・エクスプレス』に通じるものがある。アパート住民の離合集散の群像劇が『ハピネス』の見せ場のひとつだろう。そこでキーマンとなるのが、前述のペク・ヒョンジン扮する皮膚科医師だ。
ゾンビものとしては描写は過激ではないし、主役の二人によるほのぼとしたシーンも多いので、ゾンビ食わず嫌いの人にもぜひ観てほしい。