■縁台のリラックス効果
2021年の映画『夏時間』(Prime Videoなどで配信中)には、主人公(チェ・ジョンウン)の父(ヤン・フンジュ)と妹(パク・ヒョニョン)がシュポ(小さな食料雑貨店)の店先の縁台で缶ビールを飲みながら、家族の問題を腹を割って話す場面があった。
また、2017年の映画『アイ・キャン・スピーク』(Prime Videoなどで配信中)では、主演のナ・ムニと『捜査班長 1958』のイ・ジェフンと『マスクガール』のヨム・ヘランが、シュポの縁台でマッコリを飲みながら談笑するシーンがあった。
縁台は、苛烈なスペック競争(家柄、コネ、格差、学歴、語学力、投資熱、外見至上主義など)に疲れている人々の心を解放し、「本当の幸せとは何か?」を考えさせる舞台装置なのだ。
昔ながらの縁台の姿は、2005年に800万人以上を動員した大ヒット映画『トンマッコルへようこそ』で確認できる。朝鮮戦争勃発後、チョン・ジェヨン扮する北側兵士とシン・ハギュン扮する南側兵士が山奥の平和な村で出くわすが、縁台を中心とした広場で少しずつ警戒心を解き、家族のようになってゆく映画である。
家族が縁台でくつろぐ習慣は韓国と北朝鮮共通だ。
筆者が翻訳を担当した脱北者の本(『ボクが捨てた「北朝鮮」生活入門』金起成・著、鄭銀淑・訳)の取材でも、著者は、「夏は茹でたトウモロコシを食べながら星空を眺めるのが最高の楽しみだった」と、縁台の思い出を語っていた。
日本のみなさんもソウルの郊外や田舎で縁台を見かけたら、ぜひそのリラックス効果を確認してみてほしい。