大ヒット作『涙の女王』でもっとも美しかったのは、第9話でクイーンズ財閥一家とヒョヌ一家が庭の縁台でいっしょに食事した場面だと思う。

 縁台は韓国語で「ビョンサン」という。屋外で飲み食いしたり、休憩したり、農作物を干したり、キムチを漬けたりするときに使われる。ソウルなど都会ではなかなか見られなくなったが、下町や郊外のシュポの前でたまに見ることができる。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『涙の女王』で2つの家族の関係をフラットにしたヒョヌの実家の縁台

『涙の女王』第9話、縁台での会食が始まったものの、都落ちした財閥副会長(チョン・ジニョン)やその妻(ナ・ヨンヒ)をはじめとする一家は意気消沈しているし、それを受け入れなければならないヒョヌ(キム・スヒョン)一家もなかなかリラックスできない。

 しかし、ヒョヌオンマ(ファン・ヨンヒ)が作ったテンジャンチゲを副会長が口にして、心から「おいしいです」と言うと雰囲気は少し和む。

 そのあと、ヘインの弟(クァク・ドンヨン)が空気を読まず、「食欲がない」とか「ミネラルウォーターがほしい」と言って場を白けさせるが、縁台での会食は二つの家族の距離を縮めるのに必要な儀式だった。

 その後も、縁台は二つの家族の交流の場として何度か登場する。縁台はその形状通り、フラットな人間関係を醸成する場なのである。

光州郊外の農家の縁台でくつろぐ人々