■『シュリ』(1999年)ソン・ガンホのシリアスな演技が新鮮! 

 ハン・ソッキュとともに二枚目の諜報員をふつうに演じているので、今見ると笑ってしまう。二人が『グリーンフィッシュ』のときのような鮮明なコントラストを成していないので、ミスキャストでは?と思ってしまわなくもない。

 そして、なんと本作の終盤には『ソウルの春』のファン・ジョンミンが出てくるので探してみてほしい。ハン・ソッキュ、ソン・ガンホ、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミンが同じ映画に出た時代もあったのだ。

■『反則王』(2000年)初主演作、イケメン(!)ソン・ガンホに注目 

 初主演作。33歳のスリムなソン・ガンホが、なかなかの美男子だったことがわかる作品。ぼんくら銀行員がパワハラ上司に復讐するためにプロレス道場に入門するという話で、たっぷり笑わせてくれる。

 そのひとつが、スポーツ用品店で急所を保護するファウルカップを口に着けようとして、店員に止められるシーン。じつはこの店員、のちに『新しき世界』や『愛の不時着』(タクシー運転手役)に登場するパク・ソンウンだ。

 終盤は覆面をかぶって戦うため得意の顔芸が見せられないにも関わらず、アクションだけで笑わせ、唸らせる表現力はさすがとしか言いようがない。

■『JSA』(2000年)『私たちのブルースイ・ビョンホンとの感動共演

 ソン・ガンホが唯一、北朝鮮側の人間に扮した作品。のちに『鋼鉄の雨』(2017年)でチョン・ウソンククス)を食べる場面もそうだったが、南北分断を描いた映画では韓国側の人間と北朝鮮側の人間が心を通わせるきっかけとして食事のシーンがよく登場する。緊張から弛緩への演出である。

 しかし、『JSA』では食事のシーンで逆に弛緩から緊張感が演出されたことで映画が引き締まった。

 北朝鮮側の歩哨小屋で南北の兵士が兄弟のように楽しく過ごす。韓国のチョコパイを旨い旨いとほおばる北側兵士(ソン・ガンホ)に、南側の兵士(イ・ビョンホン)がうっかり「南に来れば腹いっぱい食えるよ」と言ってしまう。

 北側兵士はチョコパイを吐き出して真顔で次のように言う。

「いいか、よく聞け。オレの夢はいつか我が共和国が南朝鮮より旨い菓子を作ることだ。その日までこのチョコパイで我慢する」

「………わかったよ。まったく口の減らないおやじだ」

 そう南側兵士が言うと再び和やかな雰囲気になる。ソン・ガンホの上手さが際立った、本作前半のハイライトシーンだ。

『JSA』に登場した板門店を北朝鮮側から撮影