過去の韓国時代劇では多くのイケメン俳優が朝鮮王朝の世子(セジャ/国王の正式な後継者)を演じているが、『青春ウォルダム~運命を乗り越えて~』に主演しているパク・ヒョンシクは、「世子の理想形」と言えるほどの存在だ。長身で、ルックスが完璧で、頭脳が明晰。記憶力は超人的だ。ドラマの主役として、まさに申し分のないキャラクターだ。
しかし、パク・ヒョンシクが演じる世子イ・ファンは不安にとりつかれている。夜も満足に寝られない状態なのだ。なぜそこまで追い詰められているのか。その精神状態を分析してみたい。
なお、本作は『青春ウォルダム 呪われた王宮』というタイトルで、NHK BSP4KとNHK BSで放送中である。(以下、一部ネタバレを含みます)
■『青春ウォルダム』でパク・ヒョンシク演じる理想の世子は、なぜ追い詰められているのか?
世子イ・ファンには、もともと世子になっていた兄がいた。それゆえ、彼は王子として悠々自適に風流を楽しむ生活をしていればよかった。しかし、3年前に兄が急死してしまい、押し出されるように世子の地位にのぼりつめた。それからのイ・ファンは人生がまるで変わってしまった。
彼を一番悩ませたのが、突然舞い込んできた「呪いの書」だ。その中で、イ・ファンは兄を殺したと名指しされてしまい、やがて自ら命を落とすことも指摘された。あまりに謎めいていたので無視すれば良かったのだが、「呪いの書」が予言したことの一つが実際に的中してしまい、イ・ファンは絶望的な気持ちになった。
果たして、「呪いの書」は悪霊の仕業なのか。あるいは、何者かの陰謀なのか。
疑心暗鬼になったイ・ファンにもたらされた悲報が、慕っていた師匠の一家に起こった毒殺事件だ。師匠が妻と息子と一緒に毒殺されてしまったのだ。しかも、犯人とされたのが、一家で唯一残った娘であった。
その娘ミン・ジェイ(チョン・ソニ)は逃亡したのだが、なんと、イ・ファンの元を訪れて自らの無実を訴えた。その姿に心を動かされて、イ・ファンはミン・ジェイを内官コ・スンドル(偽名である)にさせて、自らの無実を証明する機会を与えた。
それからもずっと、イ・ファンはミン・ジェイのことを信じ切っていた。たとえ、彼女が犯人であるという疑惑が生じても、イ・ファンは強く信じることで師匠の娘を絶対に助けたいと願っていた。
しかし、とんでもないことが起こった。ミン・ジェイの情夫とされる男が自殺して、遺書には「愛するミン・ジェイ」への情愛の思いが綴られていたのだ。この事実が発覚してイ・ファンは深刻な打撃を受けた。何よりも、信じ切っていた女性に裏切られたことが辛かった。同時に、好意を寄せ始めた女性に情夫がいたことも大ショックであった。