朝鮮王朝時代の女性像について書いていて、ときに虚しくなることがある。当時は男尊女卑の風潮が強くて女性が限定的に生きざるをえなかったからだ。「結婚は親によって決められる」「親の資産を相続する権利がない」「再婚の自由もない」というのが女性の立場だった。

 しかし、時代劇『青春ウォルダム~運命を乗り越えて~』のヒロインとなっているミン・ジェイ(チョン・ソニ)は、古い価値観を打破して新しい生き方を提案できる女性像を持っていた。彼女の主張はどこが斬新だったのか。そのあたりをクローズアップしてみよう。

 なお、本作は『青春ウォルダム 呪われた王宮』というタイトルで、NHK BSP4KとNHK BSで放送中である。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『青春ウォルダム』でパク・ヒョンシク演じる世子に仕えるヒロインの魅力とは?

 ミン・ジェイは「一家毒殺事件」の犯人にされていた。両親と兄が毒殺されても彼女だけが生き残ったからだ。濡れ衣を着せられたミン・ジェイは逃亡し、世子イ・ファン(パク・ヒョンシク)の協力を得て東宮(トングン)の内官になることができた。しかも、コ・スンドルという偽名をイ・ファンからもらい、抜群の推理力を発揮して殺人事件を未然に防ぐ大手柄をあげた。

 こうしてイ・ファンの信頼を勝ち取ったミン・ジェイは、両親と兄を殺した犯人を徹底的に探しまくっている。「絶対に許さない」と強い決意を持っているのだ。

 そんなミン・ジェイがイ・ファンと酒席をともにする場面が痛快だった。とにかく、ミン・ジェイは大酒飲みで、手酌で酒を楽しみながら言いたい放題になっていた。饒舌すぎる彼女は、「両家の約束で結婚が決められる」という現状に大いに不満を述べた。

 そのうえで、イ・ファンに対して「国王になったら自由恋愛の後で結婚ができるように国法を変えてください」と懇願していた。これには、イ・ファンも苦笑いを浮かべるしかなかった。

 さらにミン・ジェイは、女性が能力を生かして仕事に励める環境が必要だと力説した。彼女自身も、王宮で兵士長をしているハン・ソンオン(ユン・ジョンソク)と婚約しているのだが、たとえ状況が整っても結婚する気持ちはないと言う。食事の世話や針仕事で夫に尽くすのが嫌だというわけだ。それより、このまま王宮の内官になって、自分の才能を生かす働きがしたいと強調した。