敬愛する韓国俳優の1人、ハ・ジョンウがこのようなことを言っていた。

「映画はエンタメ。観客は貴重な時間とお金を使って劇場に来る。監督の作家主義的な作品より、純粋に楽しめるものを見たいはずだ」

 この言葉を聞いて、思い浮かべた作品の1つが『ハッピーニューイヤー』だ。この作品は、年末で賑わう「エムロスホテル」を舞台にして、14人の登場人物たちの「奇跡的な大晦日」を描いている。映画版に未公開シーンなどを加えた『ハッピーニューイヤー<TVシリーズ>』(全6話)がNetflix他で配信中だ。(以下、一部ネタバレを含みます)

■見どころ盛りだくさんの群像劇『ハッピーニューイヤー』、40年ぶりに再会した大人カップルにも注目!

『ハッピーニューイヤー』は、ハ・ジョンウが言うところの「映画を見る条件」のすべてを備えている。人気がある俳優をたくさん揃え、サービス精神旺盛な脚本を用意して、観客を楽しませるための仕掛けをふんだんに使っている……自分なりに、見終わったときの満足感は最高潮だった。

 監督は『猟奇的な彼女』のクァク・ジェヨン。笑わせて泣かせて意外な展開で締めくくる、という手法の名手だ。道理で今回の『ハッピーニューイヤー』でもクァク・ジェヨン流の意表を突くセンスが冴えわたっている。

 しかし、高校生カップルの恋愛まで後半に組み込んだのは、ちょっとやりすぎかも。それでなくとも、登場人物があまりに多い群像劇でそれぞれのキャラを把握するのに時間がかかったのに、エムロスホテルとは直接的に関係がない高校生の恋愛問題まで守備範囲に入れなければならなかった。もっとホテルの現場に集中させてほしかったのだが……。

 個人的には、当方と年齢が近い2人のエピソードに注目していた。それは、娘の結婚式に出席するためにホテルにやってきたキャサリン(イ・ヘヨン)と、彼女を迎えて心がときめいたドアマンのサンギュ(チョン・ジニョン)だ。

 2人は40年ぶりの再会だが、かつての恋人同士だった。キャサリンは「大晦日に雪が降れば素敵なことが起きるかも」と言うが、サンギュは「予報は晴れです」とリアルなことを言っていた。

 しかし、運命の大晦日。職務を終えてホテルを出ると、急に雪が降ってきて感激のあまりサンギュは立ち尽くす。途端に、彼の頭と肩に雪がしっかり積もる。その姿のまま彼が向かったのは……。

『ハッピーニューイヤー』(C) 2021 CJ ENM CORP., HIVE MEDIA CORP. ALL RIGHTS RESERVED
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