劇中に登場したコムチグッのスープは透明だった。大切な客へのもてなし料理として、大統領官邸の料理人が腕を振るった宮廷料理なのだろう。真鍮の器に入れられたコムチグッは、とても美味しそうに見えた。

 江原道の食堂で提供されるコムチグッは、骨ごとぶつ切りにしたコムチを熟成キムチとともに煮込む、真っ赤なピリ辛味のスープである。

トゥルンと溶けてしまうような食感の魚・コムチと熟成キムチとの相性が良いコムチグッ

 深海に住むコムチは、外見は少しグロテスクだが、淡泊で癖がなく美味しい魚だ。ゼラチン質がたっぷりで、カレイの煮つけのエンガワのようにトゥルンとしていて、口に入れるととろけてしまう独特の食感だ。酸味の効いた熟成キムチとの相性が抜群で、ご飯が進む味である。

 コムチグッの発祥地と言われている三陟(サムチョク)市は、江原特別自治道の東海岸の最南端に位置し、58キロほどの海岸線が伸びている。西側には太白(テベク)山脈が連なり、1980年代頃までセメントや石炭の生産が盛んだった。

コムチが水揚げされる江原特別自治道・東海岸の最南端にある三陟市の港

 市内には50あまりの洞窟があり、中でも有名なのが、天然記念物にも指定されている幻仙窟(ファンソングル)だ。約5億3千万年前に生成された東洋最大の石灰洞窟で、1.6キロに亘るコースを見学できる。

 洞窟内には遊歩道が整備され、滝のように流れ落ちる地下水の音が怖いほど聞こえてくる。自然が作り出す鍾乳洞は不思議な形をしていて、とても神秘的だ。洞窟内は1年を通じて12℃前後なので、夏場は避暑にぴったりだ。

天然記念物に指定されている三陟の観光名所の洞窟「幻仙窟」

●三陟までのアクセス

ソウル高速バスターミナルから三陟高速バスターミナルまで約3時間30分。