『青春ウォルダム~運命を乗り越えて~』は史実に基づかない架空の物語である。韓国時代劇でこういう場合は王族と悪徳高官の権力争いを描く場合が多いのだが、このドラマもその流れに沿っている。
実際、典型的な悪徳高官になっているのがチョ・ウォンボ(チョン・ウンイン)であり、彼と王族との戦いがドラマの中心軸になっている。
なお、本作は『青春ウォルダム 呪われた王宮』というタイトルで、NHK BSP4KとNHK BSで放送中である。(以下、一部ネタバレを含みます)
■『青春ウォルダム』で描かれる王族と高官の権力闘争、パク・ヒョンシク扮する世子の苦悩とは?
国王(イ・ジョンヒョク)はチョ・ウォンボの一族の支援を受けて王位に就いている。彼の姪を王妃にしているのもそのためである。それだけに国王は常にチョ・ウォンボから様々な圧力を受けている。
国王という絶対君主の立場を利用すれば、チョ・ウォンボの影響力を排除することが可能なのだが、彼が狡猾な手を使ってそれを許さないのだ。
さらに、国王にとって痛恨だったのは、ウィヒョン世子(イ・ハユル)が急死したことだ。彼は3年前に毒殺されてしまったのだ。
このような場合はウィヒョン世子の子供に王位継承権が移っていくのだが、『青春ウォルダム』で新たな世子になったのは、パク・ヒョンシクが演じるイ・ファンであった。このあたりは史実に基づかないドラマとしての違和感が残る。なぜなら世子は基本的に10歳ぐらいで結婚して早めに子孫を作ることが決まりになっていたからだ。
実際、ウィヒョン世子のように、成人していても子供がいなかったというのは史実ではありえない話なのだ。それゆえイ・ファンが弟として世子を受け継ぐことになったのだが、国王はイ・ファンの結婚をとにかく急いでいる。それには明確な理由があって、チョ・ウォンボの一族の影響力を排除するためなのだ。
国王は、チョ・ウォンボに対抗できる勢力の英山(ヨンサン)ハン氏の一族からイ・ファンの妻を迎えたいと思っている。国王はチョ・ウォンボの恐ろしさをよくわかっており、同じように強力な一族の娘をイ・ファンの妻にすることによって、王族の基盤を強くしたいと願っている。
一方のチョ・ウォンボはイ・ファンを廃して、自分の姪である王妃が産んだ息子を世子に変えて、いずれ国王にしたいと狙っている。こういう思惑の中で王族とチョ・ウォンボの権力闘争が続いていく。