夫婦の愛の再確認と互いの家族の交流に泣き笑いさせられた『涙の女王』や、現代病に悩まされる超能力一家の再生と運命の恋を描いた『ヒーローではないけれど』など、2024年は“ロマンス×家族”を描くさまざまな韓国ドラマが誕生している。現在Netflixで連日TOP10入りしている『家いっぱいの愛』もそんなドラマの1つ。

 今作の物語の主人公は、別れた夫婦とその子どもたち。舞台は一家が再会する低層マンション、その名も「家族ヴィラ」だ。(以下、一部ネタバレを含みます)

■死んだと思っていたダメ亭主が突然大金持ちの大家になって現れた!?

●『家いっぱいの愛』ストーリー

 大手スーパーの試食コーナーで働くエヨン(キム・ジス)と、そのスーパーの本部で働く娘ミレ(ソン・ナウン)、息子で大学生のヒョンジェ(ユンサナ)と犬のメダルは、家族ヴィラでつつましくも互いに支え合いながら暮らしている。ある日、ヴィラで起きた火災で大家が亡くなる事件が起こる。その後、新しい大家としてやってきたのが、なんと、11年前に離婚した夫ムジン(チ・ジニ)だった! 

 元大家の家をリフォームして自身も住み、「エヨンの心を取り戻す」とやる気満々のムジン。だが両親の離婚後、大好きな母を守ってきた自負のあるミレは、かつて母を苦しめたムジンの出現がまったく面白くない! そんな中、ムジンから「1カ月以内にエヨンの心が取り戻せなければ、30億慰謝料を払い出ていく」という提案を受けたミレ。ムジンはなんとかエヨンと2人きりの時間をもとうと奮闘するが、ミレがことごとくエヨンを独占して抵抗する。一方、ヴィラの住人の間では、火災事件に関してムジンの悪い噂が立ち……。

●見どころ

 まずなんといっても、チ・ジニ演じる謎多きキャラクター、ムジンの存在だ。

 元プロ野球選手であるムジンが、野球場でアルバイトしていたヨジンと恋愛し結婚。ミレ、ヒョンジェの2人の子どもにめぐまれる。ところが、事業に挑戦しては失敗を繰り返すムジンについたあだ名が「でくのぼう(ムジレンイ)」。エヨンが貯金をはたいて始めた軽食店を借金で潰し、エヨンから三行半をつきつけられ離婚へと至った人物だ。

 そんなダメ男が、お金持ちとなって11年ぶりに家族の前に現れた。なぜあれほど商才のなかった男が大金持ちになったのか。これまでどんな生活をして、家族の前に戻ってきたのか。ご近所さんたちが疑う最初の火災事件との関わりはないのか、エヨンや家族への想いは本物なのか……。

 これまでもさまざまななキャラクターで多彩な顔を見せてきたチ・ジニだからこそ、どこかミステリアスなムジンという人物がさらに気になっていく。

 一方、近年は憧れの上司や、野心の強い実業家など、スーツをバリっと着こなすハイクラスな女性を演じることが多かったキム・ジスが、いつも明るく、肝っ玉の大きな母親エヨンをチャーミングに演じ、新鮮な魅力を発揮。やたらとうまい野球のバッティングを生かしたコミカルシーンは必見だ。

 「子どもを与えてくれた以外はなにもよいことがなかった!」と離婚した夫ムジンの出現は、エヨンをどう変えていくのか。かつて『温かい一言』でも夫婦を演じた2人が、今度はどんなふうに夫婦の再生を描いていくのかに注目したい。