韓国ドラマや韓国映画を観た日本の人からよく言われることがある。
「二十歳をとうに過ぎた息子や娘が親、とくに母親とベタベタするシーンが多いですね」
ベタベタというのがどういうシーンを指しているのかよくわからなかったが、Netflix配信ドラマ『家いっぱいの愛』を観た日本の知人からこんな指摘があった。(以下、一部ネタバレを含みます)
■Netflix『家いっぱいの愛』で描かれる家族の濃い関係、母と子の距離が近い韓国
『家いっぱいの愛』第9話の見どころである母と娘のシーン。
「長女のピョン・ミレ(ソン・ナウン)と母親クム・エヨン(キム・ジス)の心が通じ合い、同じベッドに横になって見つめ合っていましたよね。あれは日本では、ドラマでも現実でもなかなか見られません。すごく感動的ではありますが、日本人の感覚ではちょっと気恥ずかしいかも」
筆者が1990年代後半の日本留学以降、日本の人と関わるようになってから気づいたことだが、韓国の親子の距離は物理的にも精神的にも日本の親子の距離より近いのは確かなようだ。日本人にとくに目につくのは、母親と息子の距離の近さ、親密さらしい。
母と息子の仲がよいのは好ましいことだと思うのだが、日本では、マザコン男を嫌悪する女性や、マザコン男のレッテルを貼られることを恐れる男性が韓国以上に多そうだ。
ちなみに韓国ではマザコン男のことを「ママボーイ」と呼ぶ。「韓男日女(韓国男性と日本女性)」カップルの場合、結婚が現実的になり、彼氏の家族関係が彼女の視野に入ると、ママボーイぶりが障害となって破断となる例を筆者はいくつか見ている。
韓国ではあたりまえの母と息子の関係も、日本の女性には「!」となることが少なくないようだ。
■何歳になろうが、娘や息子が未婚のうちは子供扱い
また、『家いっぱいの愛』を9話まで観た日本の友人からこんな指摘もあった。
「エヨンは自ら娘の独立をお膳立てしたにもかかわらず、いざミレが居なくなるとショックを隠せない様子でした。まだ娘がいると思って買い物を頼もうとして、我に返りメソメソ泣く始末……。日本のドラマならもっとドライに描かれそうです」
韓国の親は息子や娘が未婚のうちはいつまでも子供扱いする傾向がある。そもそも学校や職場に通える距離に実家があって親も健在なのに、一人暮らししようとする子供は日本と比べるとずっと少ない。子供が親に依存しているともいえるが、親、とくに母親の子供依存も強いのだ。