■チェ・ミンシク「フィクサー期」(2012年~)

 50代に突入したチェ・ミンシクはその円熟味を生かし、知的で色気のある怪人役、言わばフィクサーキャラに進化する。

 税関職員として押収した覚せい剤をヤクザ(ハ・ジョンウ)に横流ししたことをきっかけに裏社会の住人になっていく『悪いやつら』(2012年)、暴力団壊滅のために部下(イ・ジョンジェ)をスパイとして送り込む警視に扮した『新しき世界』(2012年)、大統領への近道といわれるソウル市長3選を目論む男を演じた『ザ・メイヤー 特別市民』(2017年)、東南アジアのカジノ王を目指す野心家を演じたドラマ『カジノ』(2022年)などがその例だ。

 このなかでも、人間の弱さと強さをリアルかつコミカルに演じて見せた『悪いやつら』は、チェ・ミンシクの魅力が最大限に発揮された傑作だ。

 最新作『破墓/パミョ』では、フィクサーキャラの延長線上にある金の匂いに敏感な風水師を演じて、その魅力を存分に発揮している。凄みのある役もいいが、若いときからの持ち味だった純朴さを生かした役も久しぶりに観てみたいものだ。