■『愛のあとにくるもの』に登場する詩人・尹東柱ゆかりの地、全羅南道・光陽市

『愛のあとにくるもの』で、来日するホンが機内で読んでいたのが、尹東柱(ユン・ドンジュ)の『空と風と星と詩』という詩集だ。劇中、ホンが詩の1節を潤吾に読み聞かせる場面もある。

 この詩集の出版に大きく貢献した人物の家が、韓国南西部にある全羅南道・光陽(クァンヤン)にある。

 光陽は、全羅南道の最東部に位置し、蟾津江(ソムジンガン)を隔てて慶尚南道・河東(ハドン)に隣接している。韓国で初めて青梅を栽培した農家があり、2月頃にはあたり一面に白い梅の花が咲き誇り、芳しい香りを放つ。

 蟾津江の河口に、東柱の親友で国文学者の鄭炳昱(チョン・ビョンウク)の家がある。東柱は、1941年の大学卒業時に『空と風と星と詩』の出版を計画したが、日本からの弾圧により断念。親友である炳昱に詩集の一部の原稿を託した。

 炳昱の母親が、預かった原稿を甕の中に隠し、床下に埋めて保管したという。その後日本に留学した東柱は、治安維持法違反で投獄され、1945年2月に他界する。

 1948年になり、炳昱や東柱の弟らの努力により、詩集『空と風と星と詩』が出版されるや、「韓国の国民詩人」と言われるほど、東柱の詩集は人々の心をつかんだ。

『愛のあとにくるもの』に登場する詩人の尹東柱(右)と親友の鄭炳昱(左)
全羅南道・光陽にある鄭炳昱の家に隠して保管していた尹東柱の詩集が、のちに『空と風と星と詩』として出版された

 炳昱の家が残る蟾津江の河口には、蟾津江で捕れる魚介類を食べさせる食堂が並んでいる。

 シジミの和え物やスープ、韓国の秋を代表するコノシロの刺身などに舌鼓を打つ観光客が後を絶たない。

光陽市にある蟾津江の河口にある食堂で食べたシジミの和え物とスープ

●光陽市へのアクセス

釜山西部(沙上)ターミナルから光陽バスターミナルまで約2時間20分。