そうなのだ。『熱血司祭2』は派手なアクションシーンを織り交ぜた痛快コメディ。制作側はあの手この手を使って視聴者を笑わせようとする。そのための伏線をどんどんばらまいてくる。しかし、あえて伏線を回収しない。ほったらかしにして、次の伏線を用意してくるのだ。

 その際の手順は、「極端に驚かせる」→「一応安心させる」→「逆を突いて笑いを取る」というスタイルだ。一例を挙げよう。

 キム・ホンシクは残忍な方法で標的を虐殺する。身の毛も凍るほどの恐ろしさだ。こうして視聴者を極端に驚かせたあとで、一転してキム・ホンシクが情感のある男に変身する。なんと、検事のパク・キョンソンに一目ぼれしてしまうのである。

 その際の映像は完全にマンガチックになっている。ここで視聴者はキム・ホンシクの人間らしい一面を見てホッとする。

 さらには、パク・キョンソンとデートができた彼は、うぶな男子高校生のようなふるまいに終始する。この男のあまりの落差に接して視聴者の頬がゆるむ。こうした「緊張・弛緩・微笑」という三段階プロセスがドラマの中で随所に出てくる。

 ク・ジャヨンも一役買っている。彼女はコワモテの女刑事として登場したあと、麻薬組織のアジトになっている船に乗り込むために巫女(みこ)となり、船中で馬鹿馬鹿しい祈祷を繰り返す。誰が見ても怪しい正体がバレバレなのだが、彼女は難なくピンチを脱していく。麻薬組織の用心棒が揃ってボンクラだからだ。

 かくして、突飛な設定が次々に出てきて、しまりのない形で終結する。その繰り返しだ。ときには、「こんなふざけた話でいいの?」と思ってしまうのだが、もちろん、『熱血司祭2』の場合はそれでいい。思いついたことを無鉄砲に繰り出すパワーはかならず高揚感に結びついてくる。

「どんな設定でもやってみよう。結果は問わない」

 この精神にとても勇気づけられた。『熱血司祭2』には「おどけた滑稽」という「諧謔精神」が全編にみなぎっていて、乾いた人生を潤してくれる。

●配信情報

『熱血司祭2』ディズニープラス スターにて独占配信中

[2024年/全12話]演出:パク・ボラム 脚本:パク・ジェボム

出演:キム・ナムギル、イ・ハニ、キム・ソンギュン、ソンジュン、ソ・ヒョヌ、キム・ヒョンソ、キム・ウォネコ・ギュピル

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