U-NEXTで配信されている『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』。全16話が完結しても、強烈な余韻が残っている。意表を突く物語展開によって、最後までワクワク感が消えないドラマだった。(以下、一部ネタバレを含みます)
■『オク氏夫人伝』の醍醐味、物語の進行とともに「キャラ変」した3人の登場人物
この『オク氏夫人伝』には捨てキャラがまったくいない。どの作品でも数合わせのための登場人物が何人もいるものだが、『オク氏夫人伝』では出てくるキャラにみんな相応の役割が付加されていて、最後まで存在理由が明確だった。そういう意味では、人物の描き方が本当に重層的で見事だった。

そんな中で特に注目したいのが、「キャラ変」が著しかった3人である。この人たちは登場した時と終盤の描かれ方が別人のようになっていた。このように、キャラクターそのものが物語の進行にともなって劇的に変わっていくのも、最後までドラマを見続ける醍醐味になっていた。
まず、「キャラ変」の1人目は村の有力者イ・チュンイル(キム・ドンギュン)である。当初、この男はあまりにひどい性格だった。悪徳高官の手先となって罪を重ね、発覚を免れるために、オク・テヨン(イム・ジヨン)の夫ソン・ユンギョム(チュ・ヨンウ)に逆賊の罪を負わせた。オク・テヨンの一家を奈落の底に落とした張本人だったのだ。
しかし、オク・テヨンは、大罪に問われたイ・チュンイルの弁護を担い、減刑を勝ち取った。本来なら、イ・チュンイルが泣いて詫びるのが当然なのに、両班(ヤンバン)として面目が潰れたという理由で、オク・テヨンを罵倒した。これほど非人間的な男だったのだ。
一転して、終盤にイ・チュンイルは人が変わったように、周囲に配慮する善人になっていた。オク・テヨンの「法と情を守る精神」に感化されて、非道な男が生まれ変わったのか。その様変わりはあまりに劇的だった。
「キャラ変」の2人目はチャ・ミリョン(ヨヌ)である。彼女は、ソン・ユンギョムの弟ソン・ドギョム(キム・ジェウォン)の妻だ。
当初、彼女はオク・テヨンに復讐するためにソン・ドギョムに近づいた。彼女の一家がオク・テヨンによって没落させられた、という間違った教えを受けていたからだ。結果的に、チャ・ミリョンは復讐のための工作を繰り返した。
しかし、真実を知ったとき、彼女は改心した。そんなチャ・ミリョンをオク・テヨンは見捨てず、家に招き入れた。当初は反発していたソン・ドギョムも、やがて妻の本当の愛を知って心のわだかまりを溶解させた。
かくして、チャ・ミリョンは「悪女」から「聖女」に変わって行った。この「キャラ変」は本当に心地よいものだった。