ゾンビ禍に見舞われたソウルで離ればなれになった会社員ヨンジュ(ジス/BLACKPINK)と軍人(パク・ジョンミン)の物語『ニュートピア』は、K-ゾンビというジャンルの成熟が感じられるドラマだ。
ゾンビものは、原点といえる映画『ゾンビ(原題:DAWN OF THE DEAD)』などの文法をなぞりながらも、新しいアイデアを盛り込むことで魅力的な作品になる。今回は『ニュートピア』の新機軸に着目しつつ、過去のK-ゾンビ作品も振り返ってみよう。(以下、一部ネタバレを含みます)
■『ニュートピア』で描かれる韓国らしいゾンビ対策
『ニュートピア』第4話で新しいなと思ったのは、泥酔した者はゾンビに襲われず、たとえ噛まれて感染してもゾンビ化しないという仮説だ。
これまでのゾンビものでは、ウイルスに対する免疫がある者やゾンビの皮膚を羽織ったり体液を身体に塗りたくったりした者は襲われないという設定はあったが、泥酔者は初めてだ。飲酒大国、韓国らしい発想である。これだと夜、パンデミックになれば、韓国人の多くは無事ということになる。
もうひとつは、高麗人参エキスを常飲していた者は感染してもゾンビ化が遅れるという仮説。さすがにこれはすぐ却下された。この調子だと、そのうちニンニクが効くという説も出てきそうだ。

■K-ゾンビのオリジナリティとは?
K-ゾンビが最初に注目されたのは、コン・ユ、マ・ドンソク、チョン・ユミ、チェ・ウシクらが出演し、1,156万人を動員した映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)だろう。KTXがソウル駅を発車する寸前に乗り込んだ感染者(シム・ウンギョン)が乗務員に噛みつき、車内はたちまちパンデミックに。高速移動する密室での乗客とゾンビの攻防は逃げ場がないだけに大変見応えがあった。
コン・ユ扮する冷徹なファンドマネージャーが、ゾンビとの戦いを通して人間性を取り戻していったり、生存者が難関を突破したりするラストシーンは落涙必至。泣けるゾンビものという新境地を開拓した。

チュ・ジフン、 リュ・スンリョン、 ペ・ドゥナが出演したドラマ『キングダム』(2019年)は、朝鮮王朝を舞台にゾンビ禍と政争が複雑にからみ合う話だった。
映画『#生きている』(2020年)はゾンビに包囲されたマンションに取り残された青年(ユ・アイン)と向かいの棟に住む女性(パク・シネ)が力を合わせてマンションを脱出しようとする話。現実のコロナ禍が始まった時期と配信が重なったのと登場人物が少なかったことで、多くの視聴者が二人に感情移入したはずだ。登場人物がドローンや無線機などを使ってサバイバルする様子も韓国らしかった。
ハン・ヒョジュ、パク・ヒョンシクが出演したドラマ『ハピネス』(2021年)は、隔離されたマンションを舞台にした一般住人、刑事、軍人、医師、弁護士、牧師、運転手、清掃員、スーパーのパート、小説家たちの群像劇。ゾンビよりも人間模様にフォーカスした大人っぽいドラマだった。

学園ゾンビものは過去にもあったが、そのどれよりもスケールが大きかったのがパク・シフ主演ドラマ『今、私たちの学校は…』(2022年)だ。韓国で問題視されるスペック競争の当事者である高校生がゾンビ化するというのも韓国らしい発想といえる。