日本で現在公開中の映画『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』は、リュ・スンワン監督の作品だ。彼は映画監督として輝かしい実績があるが、それ以前から俳優としても活躍しており、「えっ! あの映画に出ていたあの人がリュ・スンワンなの?」と思うことが少なくない。

■500万人以上を動員する映画を量産するヒットメーカー!『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』リュ・スンワン監督

 リュ・スンワンは1973年、忠清南道・温陽生まれ。中学生のとき両親を亡くし、おばあさんのもとで質素に暮らした苦労人である。高校卒業後、映画業界に入り、演出補助や脚本家、俳優として現場で鍛えられてきた。

 映画監督としてメジャーになったのは、弟で俳優のリュ・スンボム主演『ARAHAN アラハン』(2004年)やチェ・ミンシク主演『クライング・フィスト 泣拳』(2005年)のころからだろう。

 その後は、ハ・ジョンウ&ハン・ソッキュ主演『ベルリンファイル』(2013年)で700万人以上を動員。ファン・ジョンミン主演『ベテラン』(2014年)で1300万人以上を動員。ファン・ジョンミン主演『軍艦島』(2017年)で600万人以上動員。

 2021年はコロナ禍で外出が困難だったにもかかわらず、キム・ユンソクチョ・インソン共演『モガディシュ 脱出までの14日間』で第1位の動員を記録している。

 2023年にはキム・ヘス主演『密輸 1970』で500万人以上を動員。そして、『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』では750万人以上を動員し、今や堂々たるヒットメーカーである。

■俳優としては繊細で物腰のやわらかいキャラがハマり役

『モガディシュ~』のような繊細な作品を撮るかと思えば、『ベテラン』のような劇薬的な映画も撮るリュ・スンワンとはどんな人なのか? 俳優もやっているそうだが、どんな容貌なのか? 気になるところだろう。

 そんな人はまず韓国映画界の巨匠イ・チャンドン監督作、ソル・ギョング&ムン・ソリ主演映画『オアシス』(2002年)を見返してほしい。ヴェネチア国際映画祭で最優秀監督賞ほか、3部門を受賞した秀作だ。

 ソル・ギョング扮する社会不適応者が刑務所から出てきたが、家族は誰も迎えに来ない。やむなく食堂で無銭飲食し、警察のやっかいになる。そこに迎えに来た中肉中背で茶髪の弟を演じているのが、リュ・スンワンだ。兄のていたらくにあきれながらも、おおらかな気持ちで接する気のいい弟の演技に涙が出そうになる。