イ・ビョンホンとユ・アインが1980年代から1990年代の囲碁の師匠と弟子に扮した映画『スンブ: 二人の棋士』の配信がNetflixで始まった。実話をもとにしたヒューマン作で、世界的なレジェンド棋士だったチョ・フニョン師匠(イ・ビョンホン)と、弟子でありライバルのイ・チャンホ(ユ・アイン)という2人の囲碁棋士が挑む、一世一代の勝負(スンブ)を描いている。
■イ・ビョンホン主演映画『スンブ: 二人の棋士』見どころは?
韓国は今や中国と並ぶ囲碁大国で、優れた棋士を数多く輩出している。なかでも1960年代、6歳のとき、当時は最強国だった日本で修行して頂点に登り詰め、2019年には日本政府から紫綬褒章を贈られた趙治勲(ちょう ちくん/チョ・チフン)はあまりにも有名だ。
囲碁を題材にした韓国映画で思い出すのは、チョン・ウソン主演『神の一手』(2014年)とクォン・サンウ主演『鬼手 キシュ』(2019年)だ。両作とも賭け囲碁がテーマのノアールで、舞台は現在のソウルや釜山の裏社会。暴力シーンも多く、今どきの韓国映画らしい刺激の強い作品だった。
一方、『スンブ: 二人の棋士』は、囲碁の表舞台で頂点を競い合う二人の物語だ。舞台は囲碁が国民的人気を誇った1980年代から1990年代。題材も背景もやや地味で、囲碁に興味がある人でもない限り、あまり食指が動きそうにない作品かと思われたが、気が付いたら画面に釘付けになっていた。
無敵の囲碁棋士フニョンが、独学で囲碁を学んだ少年チャンホ(キム・ガンフン)を住み込みの内弟子にする。師弟とはいえ二人はその棋風(碁の打ち方)の違いから互いにすれ違いを感じ始める。時を経て成長した弟子チャンホは師匠の座をおびやかす存在となり、凄絶な勝負が幾度も繰り広げられる。

この映画の魅力は、CGを使った過剰な演出が少ないことだ。囲碁が題材なので、映像の大半は碁盤を挟んで棋士が向かい合うシーン。印象的な音声は白と黒の碁石を盤に置くパチッという音くらい。
師匠と弟子に扮するイ・ビョンホンとユ・アインは出演作によっては、男臭さや色香を大いに見せる俳優だが、本作では囲碁以外のことにほとんど興味をもたない、どちらかというと垢抜けしないおじさんに徹している。
とくに師匠の1980年代らしいヘルメットをかぶったような中途半端な長髪はその役作りに大いに貢献している。それが逆にイ・ビョンホンの色気をあぶりだしているとも言えるのだが。
