Netflix話題ドラマ『隠し味にはロマンス』6話では、急用で全州(チョンジュ)の食堂を空けることになった料理人のヨンジュ(コ・ミンシ)が、留守番するボム(カン・ハヌル)、ミョンソク(キム・シンロク)、チュンスン(ユ・スビン)に残したメッセージが興味深かった。(以下、一部ネタバレを含みます)
■Netflix『隠し味にはロマンス』で主人公が営む食堂の食材仕入れ先は、実在する全州の南部市場
ヨンジュの伝言の内容は、「旬の材料を使うこと」「店の隣の菜園で獲れた野菜は不細工でも大目にみること」「仕入れは南部市場で」といったものだった。
ヨンジュが切り盛りする食堂「ジョンジェ」のように、飲食店の隣に菜園があって、主人自ら野菜を栽培、収穫して出している店は、韓国の地方に行くとたまに出合える。
サンチュをはじめとする葉野菜は比較的、栽培が容易なので、たとえば焼肉店なら、主人が摘んでいる様子を見物したあと、摘みたての葉野菜で肉を包んで食べることができる。これをいっしょに経験し、その瑞々しい食感に感激した日本の知人のなかには、自宅のプランターでサニーレタスを栽培し始めた人もいる。

ヨンジュが食材の仕入れ先として強く推奨していた全州の南部市場は、全州観光の拠点といえる韓屋マウル(伝統家屋街)から西方向に10分ほど歩いたところにある全州川(チョンジュチョン)沿いにある。
この20年間、地方都市の観光整備が進み、アーケード式の商店街と呼んだほうがしっくりくるものが増えているが、南部市場は比較的、昔ながらの風情を残している。
南部市場を訪れたら、メインの通りだけでなく、それに沿って東西南北にのびる細い路地までくまなく歩いてもらいたい。そこには市場で働く人や仕入れに来た商人たちがたむろする食堂や飲み屋がある。
そんな店に勇気をもって飛び込み、女将や隣席の客に、「こんにちは。ドラマを見て日本から来ました。おすすめはなんですか?」と、カタコトの韓国語で言えば、放ってはおかれないだろう。ちなみに、『隠し味にはロマンス』の原題は、「タンシネ マッ(あなたの味)」である。

