■「差し押さえ」はドラマの中だけの話かと思っていたら、まさか現実でも!?

 1年半が過ぎたある日。帰宅すると、ポストが異様なことになっていた。封書の束がぎっしり詰め込まれているのだ。いくつかは入り切らずに、床にバラバラと散乱している。一体、何ごと? 驚いて、封書を確認すると、すべて貸金業者からのもの。いずれも家主宛だった。

 胸騒ぎがして、その場で大家さんに電話をしたが、何度かけても応答がない。いてもたってもいられず、仲介してくれた不動産屋に駆け込むと、不動産屋の社長は私の顔を見るなり、申し訳なさそうに言った。

「お宅が差し押さえになったみたい」

 大家さんが返済不能に陥ったため、債権者が裁判所に申し立てをし、家が差し押さえられたのだという。頭の中が真っ白になった。放心状態の私に向かって、不動産屋さんは続けた。今朝、家は売りに出された。でも、契約期間中はこのまま住み続けられるし、家の買い手が見つかれば保証金も問題なく返ってくる。

 ただし、売れなければ競売にかけられる可能性が高く、落札価格によっては保証金が戻らないこともある──。

 そんな内容だったように思う。気が動転していてあまり耳に入ってこなかったが、保証金が戻らない可能性があるという言葉だけは、はっきり聞こえた。(後編につづく)