架空の朝鮮王朝時代を舞台に、度胸と澄んだ心、そして高い霊力をもつヒロイン、ヨリが、初恋の君ユン・ガプに憑依した悪神カンチョリとともに、王家への恨みを抱く悪鬼・八尺鬼に挑むダークファンタジー『鬼宮(ききゅう)』。天に昇り損なった神と、生真面目な役人の2役に扮したのは『トッケビ〜君がくれた愛しき日々〜』や『ゴールデンスプーン 』で知られるBTOBのユク・ソンジェだ。
■朝鮮王朝時代、イ・サンのおかげで役人になれた美食の大食漢パク・チェガ
千年の修行の末、ようやく天に昇ることが叶った龍が、その昇天姿を人間に見られてしまったせいで地上に落ち、大蛇(イムギ)に戻ってしまう。人間に恨みつつ、再び天に昇るために、霊力のあるヨリ(キム・ジヨン)につきまとっているのが、劇中のカンチョリだ。
その悪神が、ときの王イ・ジョン(キム・ジフン)の特命を受けた役人、ユン・ガプ検書官(コムソグァン)の魂に入ってしまう。
庶子のために、両班たちからは格下扱いのユン・ガプだが、魂は鬼神なものだから、朝廷の高官はもちろん、王の前でも偉そうな態度。一方で、はじめて知った人間の食べ物のおいしさに狂喜乱舞し、尋常ではない量を食べ尽くす姿も驚かせた。
粥からはじまり、宮廷料理にお菓子まで、さまざまな食べ物に舌鼓をうち、天にも昇るように喜ぶカンチョリを、ユク・ソンジェがユニークに演じて楽しませている。
そんな、大蛇に肉体を乗っ取られた検書官ユン・ガプのような破天荒で美食家の検書官が実際にいた! 正祖の時代に活躍した実学者で詩人・画家のパク・チェガ(朴斉家)、その人だ。
1750年。王命の伝達や報告等を行う承旨(スンジ)と立派な役職につく両班の家に生まれたパク・チェガだが、妾の子だったため、家族としては認められなかった。が、実父は息子を大切にし、学問も教えていたそうだ。その後、その父親が亡くなり、母は針仕事などで苦労しながら息子を育てた。彼の文才を伸ばすため、名士がいるときけば、訪ねては酒や食事でもてなし、息子の教育を頼んだのだとか。
やがて、19歳を前後に実学者のパク・ジウォン(朴趾源)に師事。もともと庶子のために科挙が受けられなかったパク・チェガだが、その文才は世に知られるようになり、同じく庶子で苦労していたリュ・トッコン(柳得恭)、イ・ドクム(李德懋)らと発表した詩集の名声は清国にも届いた。