韓国ドラマを見ていていつも思うのは、韓国の生活や社会問題がストーリーに深く関わっている、ということだ。その場合にキーワードとしてぜひ取り上げたいのが「四柱推命」「儒教」「しゃべりすぎるキャラ」の3点である。やはり、ドラマは「社会を映す鏡」そのものなのだ。

■韓国ドラマの三大キーワード「四柱推命」「儒教」「しゃべりすぎるキャラ」

 母は済州島(チェジュド)で生まれ育ったが、筆者が子供の頃からよく言われたのは、「人間の運命は決まっている」ということだった。それはまさに「四柱推命」的な考え方だ。

 この「四柱推命」はその人間が生まれた年・日・時間によって運命を占うものであり、韓国の多くの人がその占いを信じ切っている。一時期韓国の新聞をいくつも購読していたが、紙面には四柱推命を基にした占い師の広告があふれかえっていた。その現象は、人々の生活に「四柱推命」が深く関わっている証でもあった。

 そういう韓国社会を反映しているドラマでは、運命論的な物語が本当に多い。人は生まれながらにしてすでに決められた運命を持っている、という考え方を骨子とした作品をよく見かけるのだ。そのおかげで、本当にドラマチックな話が展開されていくのは大いに結構なのだが、度が過ぎると、「主人公の男女が子供の時にすでに会っていて深い縁を持っていた」というエピソードまで発展してしまう。

 ここまでくると、都合よく運命論が使われすぎているきらいがある。実際、脚本家は主人公の人生を飛躍させる必要に迫られたときは、「四柱推命」的な運命論を随所に織り込んでしまう。これは、韓国らしい独特な物語構成だと言えるだろう。

 次は儒教について。518年間続いた朝鮮王朝は儒教を国教にしていたので、当時は全土にわたって儒教的価値観が浸透していた。その朝鮮王朝が滅んで115年になるので、現代韓国では儒教の影響力が王朝時代より小さくなっているが、それでも儒教は決して過去の遺物ではない。いまだに韓国社会で濃厚な倫理規準になっている。

 なんといっても、儒教の最大級の徳目は「孝」と「長幼の序」である。これが今も韓国で美徳として重宝されている。

 その一方で、儒教には人間の身分的な格差を認める思想があり、それが身分差別を助長してきたのも事実だ。結果的に、身分の違いというものが韓国ドラマでことさら強調される風潮を生んでいる。たとえば、今の韓国には王家はないのだが、財閥家がその王家の代わりを務めているのも確かだ。

 それを象徴的に見せてくれたのが『涙の女王』であった。このドラマでは、冒頭から主人公ホン・ヘイン(キム・ジウォン)の実家である財閥家の王族なみの豪華な暮らしが繰り返し描写された。それは裏を返せば、特権階級としての身分格差を強調する展開を生んでいた。

 とはいえ、それで終わらないのがアイロニーの好きな韓国ドラマであり、企業乗っ取りに遭って財閥家が没落していく「落ち」もしっかり描かれていた。