新作韓国映画『ソジュ戦争(原題)』は、1990年代後半のIМF事態(通貨危機)を背景に、経営不振のソジュ(焼酎)会社財務担当ジョンロクと、彼を騙そうとするグローバル投資会社社員インボムの企業戦争と友情の物語だ。
ジョンロク役に『破墓/パミョ』『コンフィデンシャル/共助』『三食ごはん』シリーズのユ・ヘジン、インボム役に『復讐代行人~模範タクシー~』『捜査班長 1958』『脱走』のイ・ジェフン。ソジュ(焼酎)会社を引き継いだ財閥2世役に『梨泰院クラス』『模範刑事』のソン・ヒョンジュ、ソジュ会社の弁護士役に『賢い医師生活』『ヴィンチェンツォ』『私たちのブルースの』のチェ・ヨンジュンというキャスト陣。日本でも公開が予定されている。(以下、一部ネタバレを含みます)
■映画『ソジュ戦争』注目の飲酒場面、ソジュの生卵入り漢方茶割り!
タイトルから、えげつない企業戦争ものを想像するかもしれないが、時代背景が今よりはだいぶ牧歌的な1990年代ということもあり刺激は強過ぎない。どちらかというとヒューマニズム寄りの作品だ。
会社とソジュを愛する実直なジョンロクと拝金主義のインボム。この二人を通して、「仕事とは何か?」を考えさせられる作品である。資本主義の申し子のようなインボムがジョンロクの人間味にふれ、少しずつほだされてゆく演技も見ものだ。
題材がソジュだけに、飲酒場面にも注目だ。ジョンロクとインボムがソウルの鐘路3街(チョンノサムガ)辺りでハシゴ酒をする場面は、社会に出たら“飲みニケーション”が容赦なく降りかかってきた時代を思い出し、恐ろしくも懐かしい。

笑ってしまったのは、ソジュに生卵と雙和湯(サンファタン、雙和茶とも)という漢方ドリンクを混ぜて飲む場面だ。2000年代に入って酒の種類と飲み方が多様化したため筆者もその存在を忘れていたが、1990年代まで中高年男性がこんな飲み方をしていたのを見たことがある。
朝鮮戦争(1950年~1953年)後、我が国が世界最貧国だった時代、摂取が容易ではなかったタンパク質を補い、なおかつ酔っ払ってウサを晴らそうとした横着な飲み方だ。当時、卵は肉に匹敵する貴重なエネルギー源だったので、1990年代くらいまではそれを懐かしんで飲む人がいたのである。
生卵入り雙和茶はタバン(茶房)と呼ばれる昔ながらの喫茶店で飲むことができる。タバンにはソジュを置く店もあるので試してみてもいいだろう。ただし、「良薬は口に苦し」のことわざ通り、味は保証しない。

