Netflix人気作『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』は、1話完結方式の法廷ドラマであった……と言い切るには、あまりにも多層的な構成を持っていた。主人公2人の変化する関係性、現代社会で起こりうる訴訟案件、巨大法律事務所の人事抗争といった要素が複雑に絡み合い、大河のような流れに至っていく。まるで一つのドラマの中に複数の作品が共存しているかのようだった。(以下、一部ネタバレを含みます)

■Netflix人気作『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』で一貫して描かれたテーマとは?

 このドラマは、訴訟を通じて人間の感情がどのように変化するのかを静かに見つめる。依頼人は誰もが傷を抱えて解決を弁護士に託すが、弁護士自身もまた、心に深い傷を負っている。特に全話を見終わって一番感じたのは、根源的な愛をめぐる当事者たちの葛藤と和解が繊細に描かれていたことだ。物語の中心にいつも「愛」があった。一貫していたテーマ性がこのドラマの真骨頂だ。

 物語は序盤から主人公カン・ヒョミン(チョン・チェヨン)の姿を鮮やかに描き出す。新人弁護士としてユルリム法律事務所の採用試験に臨むものの、彼女は遅刻して服装も乱れてしまった。時間厳守にうるさいユン・ソクフン(イ・ジヌク)は、その無作法を厳しく糾弾する。彼は原則を曲げぬ男で彼女を不合格とするが、幹部のはからいでヒョミンは合格を勝ち取った。そして、彼女は新人弁護士としてソクフンが仕切る訴訟チームに入った。

 最初は冷ややかに見ていたソクフンも、共に仕事をする中で彼女の異彩に気づいていく。誰も目を向けない細部を徹底的に調べ上げ、不正を暴き出す。視点の鋭さは弁護士としての将来性を感じさせた。

 最悪の出会いを経た2人がやがて「上司」と「部下」として認め合う。その過程に心を揺さぶられる。チョン・チェヨンは、周囲を和ませる柔らかな表情でヒョミンを体現する。イ・ジヌクは堅物のソクフンを寡黙に演じ、冷徹さと孤独を同時に映し出している。

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 第4話では、児童虐待をめぐる衝撃のエピソードが描かれた。裏がありそうな経営者が家政婦に娘の虐待を告発され、ソクフンに弁護を依頼する。しかし、ソクフンは徹底的な調査の末、経営者の児童虐待と不正投資を暴き、娘を救出する。そのとき、冷静なはずのソクフンが感情を爆発させ、経営者を殴りつけた。何度も執拗に……。

 気持ちを抑えられないソクフンの暴発に接して、ヒョミンも激しく動揺する。逆に、それは彼女がソクフンを身近に感じた瞬間でもあった。