■『ウンジュンとサンヨン』でウンジュンが行けなかったソウル・忠武路とは?

『ウンジュンとサンヨン』で、ウンジュンは、サンハクから借りたカメラで撮った写真を現像するため、町の写真店に出向く。しかし、現像には特殊な薬品が必要なので、忠武路(チュンムロ)の専門店に行くよういわれる。ソウルの郊外に住む中学2年生のウンジュンにとって、忠武路は遠く、現像するのを諦めてしまう。

 ソウル地下鉄3号線と4号線の停車駅である忠武路は、1960~1970年代にかけて、「韓国のハリウッド」と呼ばれるほど、韓国の映画産業の中心地だった場所だ。数多くの劇場や映画館、映画制作会社、現像所、印刷所が集まっていた。

 しかし、時代の流れとともに映画産業も変化し、1990年代中盤から2000年代初めにかけて、映画会社は江南や上岩洞一帯に移転した。忠武路で唯一営業を続けていた大韓劇場も、2024年9月末に惜しまれつつその幕を閉じた。

かつて「韓国のハリウッド」と呼ばれた忠武路で唯一営業を続けた大韓劇場も、2024年9月末に閉館した

 忠武路駅傍の細い路地にある仁峴(イニョン)市場は、安くて美味しい食堂が軒を連ねているため、かつては近隣の印刷所や商店で働く労働者たちのたまり場として、近年は会社帰りのサラリーマンたちの憩いの場として賑わっている。

忠武路駅傍にある仁峴市場内の食堂は、会社帰りのサラリーマンたちで賑わっている