快調なスタートを切ったNetflixテプン商事』。ジュノ2PM)が演じる主人公カン・テプンの父親カン・ジニョン(ソン・ドンイル)は、中小企業のテプン商事を経営していた。しかし1997年に起こった経済危機によって給料遅配に追い込まれ、その苦境の中で命を落としてしまう。代わって、息子のテプンがどのように会社を立て直していくのか。そこがこのドラマのメインストーリーになっている。

■2PMジュノ主演『テプン商事』の時代背景、韓国経済を揺るがしたIMF危機とは?

 劇中で、テプンが父親の死去にともなってテプン商事で働き始めたのは、1997年12月のことだった。当時の韓国は、経済危機に陥ってIMF(国際通貨基金)に緊急支援を要請する事態となっていた。いわば国家が破産状態になったのである。ドラマの内容を深く理解するために、当時の「IMF危機」(IMF事態)について解説していこう。

 1990年代中盤の韓国経済は絶好調だった。経済成長率を見れば、1995年が8.9%、1996年が6.8%であった。数字だけを見れば、経済の勢いを雄弁に物語っている。街には新しいビルが立ち並び、人々は明日への希望に胸をふくらませていた。しかし、きらめきの底では、見えない亀裂が静かに走り始めていた。実際、経済危機の影が、すでに忍び寄っていたのだ。

 1997年1月、最初に倒れたのは韓宝鉄鋼工業だった。資産規模14位を誇る中堅財閥「韓宝グループ」の中核企業であったが、その実態は脆かった。銀行からの巨額融資を頼みに分不相応な投資を重ねた結果、赤字が膨らみ、やがて金融機関からも見放された。

 崩れたのは韓宝だけではなかった。3月以降、三美、真露といった有名な財閥も相次いで倒れた。7月には韓国第二の自動車メーカーの起亜自動車が深刻な経営危機に陥る。のちに現代自動車に買収されたが、産業界を支えてきた巨木が、次々と根こそぎ倒れていく光景は、国民の不安と動揺を深めていった。

 追い打ちをかけたのが、タイのバーツ暴落をきっかけに広がったアジア通貨危機であった。インドネシア、マレーシア、香港、台湾へと広がる火の手は、ついに韓国にも及んだ。

 ウォンの急落により外国人投資家は株を手放し、外貨準備高が急速に減少。まるで砂時計の砂が落ちきるように、国家の体力が尽きていった。もはや自力では立て直せず、韓国政府はIMFに緊急支援を要請した。