『おつかれさま』『暴君のシェフ』などの名作、ヒット作が韓国ドラマ界を彩った2025年。毎年のように新星も現れるが、今年もきらりと光るライジングスターが登場した。そんな今年の顔が出演する年末年始にぜひ観たい隠れた名作を紹介する。(記事全3回の3回目/以下、一部ネタバレを含みます)
■2025年の女性ブレイクスター、キム・ミンハ!主演作『私が死ぬ一週間前』の奥深い演技に注目
2025年の韓国ドラマで、際立った活躍を見せた若手男性俳優といえば、『暴君のシェフ』のイ・チェミンと、『トラウマコード』『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』『巫女と彦星』のチュ・ヨンウだろうか。
そして、2025年を輝かせた若手女性俳優としては、個人的にキム・ミンハの名を挙げたい。
今年は、ジュノ(2PM)の主演作『テプン商事』で1990年代の奥ゆかしく誠実なヒロインを務め、日本でも広く顔を知られるようになったキム・ミンハだが、ここで紹介するのは彼女が主演を務めた2025年上半期の隠れた人気作『私が死ぬ一週間前』。
タイトルだけでもインパクトのある本作。物語は、生きる意欲を失っている大学生ヒワン(キム・ミンハ)の家に、初恋の人ラム(コンミョン) が死神として訪ねてくるところから始まる。その元初恋相手の死神から突然「キミは1週間後に死ぬ」と告げられるヒロイン……。ドラマの内容をまったく予習していなかった筆者は、この序盤の展開だけでも不思議な世界に連れて行かれる気持ちになった。
死神として現れる初恋の人を演じるコンミョンは、本作が除隊後の復帰作。2025年は、『広場』で暴走する御曹司役を熱演しイメージチェンジしたが、『私が死ぬ一週間前』では持前のキャラクターを活かしたかわいい死神に扮している。
コンミョン演じる死神は、絶望の淵にいるヒロインに、10個のバケットリストを叶えようと提案する。それを2人で実行していくなかで、お互いが知らなかった過去が解き明かされるのだが、そこにはこの物語の根本的な謎が横たわる。
ヒワンは、高校時代は天真爛漫だった。そんな彼女が、なぜここまで絶望するようになったのか。そして死神として現れたラムは、いつどのように命を落としたのか、ヒワンは一週間後にどう死を迎えるのか―-。
物語は過去(高校時代)と現在(大学時代)を交互しながら進んでいくが、そんななかでこのドラマの幹のようになっていくのがキム・ミンハなのである。
2016年にデビューしたキム・ミンハが、大きく飛躍したのは、2022年のApple TV+オリジナルシリーズの『Pachinko パチンコ』。在日韓国人家族4世代の激動の物語を描いた本作でヒロインに抜擢され、10代から2人の息子をもつ母親になるまでを演じた。配信先が限られていたこともあり、日本ではあまり話題にならなかったが、キム・ミンハは同作で数々の賞を受賞し、韓国はもとより世界的にも注目を浴びた。
韓国ドラマの主演女優は美肌に整えるのがまるで習わしのようだが、彼女はそばかすもそのまま。やせ過ぎてギスギスしたりもしていない。キム・ミンハは、これまでの韓国の女性俳優にはない独自性と若手とは思えぬ深みがあるのが魅力だ。
『私が死ぬ一週間前』では、ヒロインのヒワンを演じるが、天真爛漫な高校時代と喪失感に苦しむ大学時代でまったく別の顔を見せ、まるで一人二役のよう。画面を圧倒するような表情の変化に引き込まれる。彼女の演技を見るためだけにドラマを観てもいいぐらいだ。第4回青龍シリーズアワードでは新人女優賞を受賞している。