2024年12月4日の午後、僕は地元の新聞記者の知人と一緒に地下鉄の国会議事堂駅でおりた。地上にあがる階段をのぼっていくと、抗議集会特有のマイクの声が響いてきた。

 前夜、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領は「非常戒厳令」を発令した。武装した戒厳軍が汝矣島にある国会議事堂の窓ガラスを破って突入。国会議事堂職員と衝突した。現在の与党である「共に民主党」は、当時は野党だったが、尹錫悦前大統領が発した「非常戒厳令」は弾圧と判断し、阻止するために続々と国会議事堂に集まってきていた。その様子はリアルタイムでテレビに映し出された。

 非常戒厳令の報ははじめフェイクニュースかと思ったが、テレビ映像がそれを否定する。韓国はどうなっていく? 読めなかったが、とりあえず国会議事堂に行ってみることにしたのだ。国会議事堂前には、尹錫悦前大統領に抗議する人たちの熱気が渦巻いていた。

 あのとき、僕はすでに汝矣島漢江公園に足を踏み入れていたのだ。手つかずの森とビル街と国会議事堂。汝矣島漢江公園はまったく違う異空間をとり込んだ公園だった。

 大統領を巡る政治闘争は、韓国の映画やドラマの題材になる。昨年公開された映画『大統領暗殺裁判 16日間の真実』は、1979年に起きた暗殺事件をめぐる法廷サスペンスだ。チョ・ジョンソクイ・ソンギュンユ・ジェミョンらが出演している。

 韓国の大統領をめぐる話は、日本に比べるとはるかに緊張感がある。ドラマになりやすい秘話も潜んでいる。おそらく尹錫悦前大統領が発令した戒厳令もいつの日かドラマ化されるのだろう。

 森のなかからビル街に出、汝矣島駅から地下鉄に乗った。国会議事堂駅まではひと駅。以前と同じ階段をのぼって国会議事堂前に立った。入口には警備員が立っていたが、緊張感はなかった。やってきた観光客に頼まれ、一緒に写真に収まっていた。

韓国の国会議事堂。その規模は東洋最大級といわれる