人気ウェブトゥーン原作のドラマ『伝説のキッチン・ソルジャー』は、軍部隊という閉ざされた空間での兵士たちの給食作りという、グルメ系エンターテイメントとしてはアイデア賞ものの傑作だ。

 上官が「国防力の基本はメシだ」と強調していることもあり、炊事兵はただ兵士たちの空腹を満たすだけでは許されない。限られた食材、場合によっては劣悪な環境で美味しいものを作り、兵士たちの士気を向上させなければならないのだ。

 第8話では、台風被害で部隊が孤立し、ライフラインが断たれ、主人公の炊事兵ソンジェ(パク・ジフン)が窮地に立たされる。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『伝説のキッチン・ソルジャー』兵士が隠し持っていたチョコパイ争奪戦!

 このドラマを観ていると、軍人は食べることばかり考えているように見えるかもしれない。それは半分外れているが。半分当たっている。市井の暮しでは3/10くらいの比重だったものが、軍隊のように制限の多い生活環境では10にも20にもなる。

 ましてや若い兵士が大半の軍隊、しかも肉体労働が多かったら、食べることに執着するのは当然だ。

 ドラマ『刑務所のルールブック』(パク・ヘス主演)や、韓国でも大変人気のある日本映画『南極料理人』(堺雅人主演)はそのあたりが上手く描かれていた。

『伝説のキッチン・ソルジャー』第8話では、食材の供給がなくなり、兵士たちがロッカーなどに隠し持っている食べ物を活用したり、責任のある補給官(ユン・ギョンホ)が食材探しに山へ出かけたりするシーンが見ものだった。

 パエリヤの具になったスルメや、お粥の材料になったサラダチキンに続いて、白羽の矢が立ったのはチョコパイだ。飢えているときの甘いものは蜜の味。激しい争奪戦が繰り広げられる。

韓国では、スルメは酒のつまみとしてそのまま食べるだけでなく、甘辛い炒め物などにも使われる(写真の黒豆煮の右側)

 韓国の国民的おやつであるチョコパイは、数々のドラマや映画に登場したが、多くの人の記憶に残っているのがパク・チャヌク監督の映画『JSA』だろう。

 軍事境界線を挟んで対峙する韓国と北朝鮮の兵士が親密になり、北側の歩哨小屋で家族のように過ごす。そのとき、韓国のチョコパイを旨い旨いと言って食べる北朝鮮歩兵(ソン・ガンホ)に対し、韓国兵(イ・ビョンホン)が「南に亡命すればいくらでも食べられるのに」とうっかり漏らす。

 その言葉に、北の兵士が「オレの夢はいつか韓国に負けないチョコパイを作ることだ」と真顔で返すシーンは、韓国映画史に残る名セリフである。

韓国で人気の菓子、チョコパイ。飲み会でその日が誰かの誕生日だとわかったとき、チョコパイはケーキ代わりに活躍する
『伝説のキッチン・ソルジャー』の劇中、休暇を持て余し気味の先輩炊事兵ドンヒョンが一人寂しくすすっていたのは豆もやしスープ(コンナムルクッ)