Netflix話題作『エージェント・キム: リアリティペーティッド』は、過去に秘密があるが今は銀行の部長としてトラブルに巻き込まれないよう静かに暮らしているシングルファーザー、キム部長(ソ・ジソブ)が誘拐された高校生の娘(ソ・スミン)を捜索する話だ。その第4話は、キムの過去を振り返るシーンから始まった。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『エージェント・キム』主人公キムの出身地、朝鮮半島の最北端、咸鏡北道とは?

 物語序盤ですでに明らかになっているように、キムは元北朝鮮の対南工作員(韓国に侵入してテロを行う特殊部隊員)だった。

 出身は朝鮮半島の最北端、咸鏡北道(ハムギョンドプッド)の寒村。工作員候補を集めに村にやってきた指揮官(イ・ジェヨン)に対して一人の少年が、「入隊すれば腹いっぱいメシが食えますか?」と聞いていたことからもわかるように、食糧事情のよくない北朝鮮の地方のなかでも、とくに貧しいところだ。ハングリー精神の強い者が多い地域といわれていて、いかにも北朝鮮当局が工作員の卵を見つけるために白羽の矢を立てそうなところである。

 寒冷地で土地が痩せているため、主要な農産物はジャガイモやトウモロコシ。筆者の知り合いの脱北者の話では、最近の本場の平壌冷麺が黒っぽいのは、そば粉の供給が十分ではなく、代わりに咸鏡北道産のジャガイモ澱粉が多く使われているからだそうだ。

吉林省側から見た中朝国境線。凍った川の向こう側が北朝鮮の咸鏡北道
平壌の老舗「玉流館」の冷麺

韓国映画やドラマの題材になりやすい対南(対北)工作員

「我々の目的は南朝鮮(韓国)に侵入し、要人の首を取ることだ!」

 入隊した少年たちの前に立った指揮官のこの言葉は、韓国側を主体とした映画やドラマでもよく聞かれる。なかでも今も記憶に鮮明なのは、韓国で初めて1,000万人を動員した映画『シルミド/SILMIDO』だ。

「我々の目的は北韓(北朝鮮)に侵入し、キム・イルソンの首を取ることだ!」

 今年1月に亡くなった国民俳優アン・ソンギ扮する指揮官が、ならず者たちを集めて編成された特殊部隊員の前で発したこの言葉に、ソル・ギョングチョン・ジェヨン、カン・シニルらが扮した男たちが震え上がるシーンがそれだ。

『エージェント・キム』でキムが入隊した特殊部隊で、鉄条網が低く張られた水たまりを仰向けで進む訓練風景は、『シルミド/SILMIDO』にもまったく同じシーンがあった。