韓国時代劇の傑作『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』は、単なる恋愛絵巻にとどまらない。その根底には、歴史の波に翻弄された人々の苦悩と、王朝の存亡を揺るがす壮大な歴史のうねりがあった。ナムグン・ミンが熱演したイ・ジャンヒョンとアン・ウンジンが好演したユ・ギルチェ。この主人公たちの存在感が強烈だった。(以下、一部ネタバレを含みます)
■ナムグン・ミン&アン・ウンジン主演、傑作史劇『恋人』どれほど苛酷でも心から信じ合える人間がいれば魂は決して折れない
物語の舞台は17世紀前半。朝鮮王朝は清国に苦しめられていた。凄惨な戦乱と屈辱的な敗戦……その中で強い意志を持った男女が織りなす至高の純愛が描かれていた。時代の荒波は幾度となく2人を引き裂く。だが、残酷な試練こそが2人の絆をより強靭なものへと昇華させていった。
イ・ジャンヒョン(ナムグン・ミン)は実に魅力的である。当初の彼は、世のしがらみを嘲笑するかのような態度を見せていた。飄々とした生き方が特徴的だったが、1人の女性に対する愛に目覚めた瞬間、彼は一変する。愛する者を外敵から守り抜くためならば、己の命すら躊躇なく投げ出した。
凄まじい執念と一途な献身。静かな知性の中に秘められた情熱が視聴者の心を激しく揺さぶった。
一方のユ・ギルチェ(アン・ウンジン)。ドラマ序盤の彼女は、世間知らずな令嬢に過ぎなかった。だが、突如として降りかかった戦争という不条理が、彼女の運命をすっかり変えてしまった。
絶望的な状況下でも、ギルチェは決して泣き寝入りしなかった。逞しく現状を生き抜く女性になったのだ。その変貌は人間の持つ底知れぬ生命力の証明である。
物語が後半へ入ると、展開は怒涛のうねりを見せる。とりわけ胸を締め付けるのは、清国へ拉致されたギルチェを待ち受ける運命である。彼女は遠く離れた瀋陽(しんよう/清国の首都)に連行された。
言葉も通じない見知らぬ土地で、人間の尊厳すら奪われる過酷な日々が続く。その描写はあまりにも生々しく、息を呑むほどの緊迫感をもたらす。