■ク・ギョファン扮するウノの父親役にも要注目
しかし、豪雨のあとの草の匂いのする涼風のように映画の後味はわるくない。それには、ウノの父を演じたベテラン俳優シン・ジョングンの存在も大きいだろう。愛も食も惜しみなく与う全羅道人らしいおおらかさで二人を見守る姿にはホッとさせられる。自身も全羅南道の霊光出身なので。お国訛りも自然だった。
筆者がシン・ジョングンを初めて認識したのは映画『亀、走る』(2009年)だ。忠清南道の田舎町。主人公の刑事(キム・ユンソク)が売買春摘発のために仕掛けたおとり捜査で、風俗嬢(ラ・ミラン)と事に及ぶ客に扮したのが彼だった。買うほうも売るほうも本気になれない脱力演技はじつにリアルだったが、こういうシーンでも陰鬱にならず、牧歌的なおもしろみを出せるのがシン・ジョングンだ。
シン・ジョングンは『亀、走る』での演技をきっかけに出演機会が急増。1200万人以上を動員した映画『王になった男』(イ・ビョンホン主演)や『最後まで行く』(イ・ソンギュン主演)などを経て、『スティール・レイン』(チョン・ウソン主演)ではクーデター勢力に反旗を翻す副艦長役が評価され、韓国映画制作家協会賞・助演男優賞を受賞している。
最近ではNetflix配信映画『パヴァーヌ』で、ウノの父親役にも通じるおおらかさで若者たち(コ・アソン、ムン・サンミン、ピョン・ヨハン)を見守るHOF(ビアホール)社長役が印象的だった。
●作品情報
映画『サヨナラの引力』全国公開中
[2025年/115分]監督:キム・ドヨン(『82年生まれ、キム・ジヨン』)
出演:ク・ギョファン(『誰だって無価値な自分と闘っている』『脱走』『寄生獣 -ザ・グレイ-』『D.P. -脱走兵追跡官-』)、ムン・ガヨン(『瑞草洞<ソチョドン>』『愛と、利と』『女神降臨』)
提供:KDDI 配給:日活/KDDI
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