韓国で大ヒットした映画『サヨナラの引力』が日本で公開中だ。本作は、高速バス車内での出逢いをきっかけに恋に落ち、甘い時間を過ごしたが、厳しい現実から別れてしまった男女が10年後に偶然再会し、過去の思い出をたどりながら別れのつらさを噛みしめる物語。
主人公ウノには『誰だって無価値な自分と闘っている』のク・ギョファン、ヒロイン役のジョンウォンには『女神降臨』『瑞草洞〈ソチョドン〉』のムン・ガヨンが扮している。監督は長編デビュー作『82年生まれ、キム・ジヨン』(2020年)で第56回「百想芸術大賞」新人監督賞を受賞したキム・ドヨンだ。
■『サヨナラの引力』見どころは?『春の日は過ぎゆく』と並ぶ悲恋映画の傑作
2008年の夏、ソウルから全羅南道の高興(コフン)に向かう長距離バスで隣り合わせの席になった大学生のウノ(ク・ギョファン)とジョンウォン(ムン・ガヨン)。ゲーム作家を夢見るウノと、建築家に憧れるジョンウォンは同棲生活を始め、甘い時間を過ごすが、2014年には生活の不安定さから別れを選ぶ。
その10年後の2024年、二人は出張先のホーチミン発ソウル行きの機内で偶然再会。同棲時代の甘い暮らしと別れの苦さを振り返る――。
ク・ギョファンといえば、今年前半の話題ドラマ『誰だって無価値な自分と闘っている』の芽が出ない映画監督ドンマン、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の笛吹男、『新感染半島 ファイナル・ステージ』のサイコな武闘派集団のリーダー、『D.P. -脱走兵追跡官-』のお調子者の追跡官、『モガディシュ 脱出までの14日間』の短気で好戦的な北朝鮮高官役など、エキセントリックな人物がハマり役だ。
『サヨナラの引力』の予告編を見たときは、ク・ギョファンが二枚目に見えてしまい、劇場では違和感を覚えながら鑑賞することになるのではと身構えていた。
だが、物語の最初こそ常識的な青年として登場したウノだったが、ジョンウォンと過ごすうちにいつものク・ギョファンらしさを発揮。おかしな言い方だが、ジョンウォンと別れる頃には完全に『誰だって無価値な自分と闘っている』のドンマンになっていて安心した。
本作最大の見せ場は、二人の気持ちのすれ違い描写と互いを傷つける言葉の応酬だ。その生々しさは「ヒリヒリ」という言葉がぴったりくる。映画前半で二人の蜜月時代が見ていて恥ずかしくなるくらいしっかり描かれているので、後半の二人の冷え切った様子、別れに至るシーンが余計にむごたらしい。
気持ちのすれ違いから別れるまでを、ここまで丁寧に描いた映画は、日本でも評価の高い映画『春の日は過ぎゆく』(ホ・ジノ監督、ユ・ジテ&イ・ヨンエ主演)以来だろう。