■反論続出も、次々と見つかる「人類滅亡」の痕跡
もちろん、発表直後から今に至るも「ヤンガードリアス衝突仮説」には否定的な見方も多いが、1万2800年前に古代人の集落が隕石によって壊滅した決定的な証拠も見つかっている。
米・カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジェームズ・ケネット名誉教授(地質学)らを中心としたチームの研究によると、シリア北部、現在はダム湖の下に沈んでいる「テル・アブ・フレイラ遺跡」で発掘された遺物を検証すると、集落全体に2200℃を超える超高温で瞬時に溶けたガラス状の物質が広がっていることがわかったという(ケネット博士によれば「わずか1分でクルマを溶かすほどの温度」という)。
さらにケネット博士によると、この破局的な被害を引き起こした彗星の破片群、つまり流星群は「地球の半球全体で数分間の間に数千回の空中爆発を起こした」という。要はチェリャビンスク隕石クラス、いやそれ以上の爆発が”絨毯(じゅうたん)爆撃”のように起きたわけだ。
■1万2800年前の大災厄が再び地球を襲う!
とはいえ「そりゃ1万2800年前は大変だったけど今は関係ないじゃん!」という方もいるだろう。だが、ここからが本題。迫りくる人類滅亡のお話だ。
問題は1万2800年前の破局的な天災を引き起こした”主犯”だ。専門家によると先に書いたようにエンケ彗星を母体とする「おうし座流星群」が最有力の”容疑者”なのだが、その流星の巣に地球が突入する日が近づいているかもしれないのだ。
しかし、「毎年見られるおうし座流星群のどこが危険なの?」と思う方も多いだろう。また、ちょっと天文に詳しい方なら「約3年周期で地球に最接近しているエンケ彗星で地球滅亡なんて馬鹿なの?」とせせら笑うところだろう。
だが、そうも言い切れないのだ。このエンケ彗星の周回軌道上には(あるいは周回軌道そのものが)「ダストトレイル」と呼ばれる塵(ちり)つまりダストやデブリで埋め尽くされているのだという。で、そのトレイルには濃淡、メチャクチャダストやデブリが集まっているところと集まっていないところがあり、それゆえ、年により流星群に”当たり外れ”があるのだという。
そして、その流星の巣と地球の軌道が最接近した時、再び2200℃の超高温で地球上が焼き尽くされる危険性が大だというのだ。しかも、世界の天文学者の一部には「すでに、その危険な時は目前に迫っている」と警告する者も少なくない。
一例を挙げれば、イギリスの天文学者で「おうし座流星群」研究の第一人者であるデイヴィッド・ジョン・アッシャーは「流星の元となる物質やデブリ、なかには”ツングースカ大爆発”を引き起こしたクラスの隕石などが集まっていると予想される」として、この高密度な流星群の軌道と地球の軌道が数千年の周期で交差する可能性があるとしている。
夜空を煌々と照らす「火球」の出現が妙に多いな……という時は、天から「大災厄の炎」が近づいてきていることを予兆しているのかもしれない。
Fire from the Sky
カリフォルニア大学サンタバーバラ校/The UCSB Current
https://www.news.ucsb.edu/2020/019823/fire-sky
Evidence of Cosmic Impact at Abu Hureyra, Syria at the Younger Dryas Onset (~12.8 ka): High-temperature melting at >2200 °C
ネイチャー/サイエンティフィック・リポート
https://www.nature.com/articles/s41598-020-60867-w
『人類前史(上下巻)』グラハム・ハンコック著/大地舜・榊原美奈子訳/双葉社