■深夜3時、電話の向こうからすすり泣く声が……
【前編のあらすじ】
都内某所のキャバクラでナンバー1だったミサト。彼女の常連客の一人、IT企業の社員だというMは毎回キャッシュでかなりの額をミサトにつぎ込んでいた。しかしある日、Mのウソが発覚。それを機に店には姿を現さなくなったのだが……。
都内某所のキャバクラでナンバー1だったミサト。彼女の常連客の一人、IT企業の社員だというMは毎回キャッシュでかなりの額をミサトにつぎ込んでいた。しかしある日、Mのウソが発覚。それを機に店には姿を現さなくなったのだが……。
それからしばらくした頃だろうか。いつものように店の営業が終わり、家路に着いた深夜3時、突然、ミサトからの着信があった。
「……アユミさん、どうしよう」
受話器からはミサトのすすり泣くような声。どうしたのか理由を尋ねても泣くばかりだったので、私はすぐに店長に連絡をとり、ミサトの家に向かった。
家の前でミサトが震えながら手にしていたものは封筒だった。そこにはミサトの写真と、Mが書いたと思われる長文の愛の言葉が書かれた手紙があった。
■「ミサトは俺の彼女だから……」男の妄執が暴走
ミサトはあの一件以来、Mからの度重なる電話とメールに悩まされていた。メールの内容は、
〈お金がないからもう店には行けないけれど、彼女なんだからこれからも会ってくれるよね?〉
というものだった。ミサトはMに色恋営業をしていたため、「自分はミサトと付き合っている」とMは思い込んでしまっていたのだ。
だが、ミサトはメールを無視して電話も着信拒否した。色恋とは言わずに夢を見させたままMを切ったのだ。そんなミサトの態度に激昂したのか、このようなストーカーまがいの行為に走ったのかもしれない。
盗撮された写真はミサトの家の前で撮られたものだった。しかも、封筒には切手が貼られていなかったので直接、ポストに入れたということになる。つまり、自宅がバレているということだ。
「警察に相談しよう」と店長は言った。だが、ミサトは「家がバレてしまってるから、逆上されたら嫌だ」と断固拒否した。結局、店長がしばらくミサトを家まで送るということになり、その日は解散した。