■宇宙で生命の材料は製造された

宇宙から生命がやってきた? 非常識な学説が、今や学会で認められ始めている

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 1903年、ノーベル化学章受賞者のスヴァンテ・アレニウスは、極小の生命の素が恒星の放射圧で宇宙に広がっているという説を提唱した。パンスぺルミア説の始まりだ。


 1969年、オーストラリアに落下したマーチソン隕石から複数のアミノ酸や有機酸が検出され、その後も他の隕石やはやぶさ2の回収した小惑星サンプルからアミノ酸等が見つかり続けている。


 宇宙空間には有機物がある。宇宙は真空で極低温、さらに有害な放射線に満ちているため、そんな場所でアミノ酸ができるわけがないと多くの学者は否定的だったが、事実は違った


 地球での化学進化説は、そっくりそのまま宇宙での化学進化説に取って代わろうとしている。

 

 地球でもアミノ酸はできるが、それ以上の高分子の有機化合物が合成されるには地球の環境では無理だ。地球とは違う条件の星で作られたアミノ酸や高分子有機化学物が隕石や彗星、宇宙のチリといった形で地球へ降り注ぎ、生命の素となったと考えられるのだ。


  従来の化学進化説が地球起源説とすれば、こちらは宇宙起源説である。

■私たちは宇宙人に作られた?

わたしたちを作ったのは宇宙人? 宇宙人が自分で作った生命の素を宇宙にばらまいているというのが意図的パンスぺルミア説だ shutterstock_1301601919

 宇宙で生命の材料が作られただけではなく、宇宙人によって地球へ生命そのものが運ばれたというのが、DNAの発見者として名高い生化学者のフランシス・クリックと化学者のレスリー・オルゲルの「意図的パンスペルミア説」だ。


 無機物から有機物はできても、有機物が高分子物質へと進化し、生物が生まれるのは確率的に限りなく低く、「別の惑星の知的存在によって意図的に地球に伝達された」のではないかという。


 これは宇宙起源説とはまったく違う。地球に生命を生み出すべく、知的生命体によって微生物を積んだ宇宙船が他の恒星系から打ち出されたというのだから。


 意図的パンスペルミア説はSFのような話だが、根拠はある。モリブデンは地球上の鉱物のわずか0.02%しかないが、生物には必須の微量元素だ。地球上にわずかしかない元素が生命に必須の物質というのは理屈に合わない。モリブデンが豊富な他惑星で進化した生物が地球の生物の元となっているから、私たちにはモリブデンが必要なのではないか? 


 DNAやRNAといった遺伝子の構造が、すべての生物で共通しているのもおかしいとクリックはいう。共通の祖先となる生物がいて、そのクローンが我々の祖先であり、だから生物は共通の遺伝子コードを持っているのだ。


 ちなみにクリックは宇宙人が地球上の生物を作ったと本気で考えたわけではないらしい。生命の起源を考えた時に「私たちの祖先の故郷として特別な種類の惑星を示している可能性」も考えようと(たぶん頭の体操のようなつもりで)、宇宙人が生物を作った可能性を思いついたのだそうだ。