■態度が一変した仲介業者のA氏
児玉さんはすぐに仲介業者のA氏に電話をかけた。
「あの、昨日、依頼のあったマンションに来てるんですけど、この部屋って何の部屋なんですか? お札を貼った痕がいっぱいあって、気持ち悪いことに──」
言い終わる前に電話の向こうのA氏の声の調子が一変し、「児玉くん、どこにいるの?」と訊ねられた。
「301号室です」
「えっ……そうか、ちょっと外に出ようか」
普段と違う様子のA氏の声に従い、部屋の外に出て鍵を閉め、キーボックスに戻した児玉さん。電話を掛け直すとA氏は、
「どうやって入ったの? 鍵なかっただろ?」
と詰問してきた。鍵は3階のキーボックスにあったと説明をすると、今度は「はぁ!?」と困惑した様子で返される。ボックスが壊れていたので勝手に鍵を使って部屋に入ったのがマズかったかと聞くと、
「ふざけんな! 鍵なんてねえんだよ!」
とA氏は電話越しに怒鳴り声をあげた。
■“開かずの間”のはずだった部屋
A氏の話によれば、そのマンションは彼自身がキーボックスを新調して、101と201の鍵を置いたが、301の鍵はそもそも大家自身も持っていないという。
(大家も鍵を持ってない? キーボックスもない?)
今度は児玉さんは困惑する番だった。そのあいだも電話口で、
「入れるわけがねえ、嘘つくんじゃねえ」
と怒鳴られ続け、さすがにムッとなった児玉さんが、
「いや、だからここに鍵もキーボックスもあるんですよ」
と言い返すと、「鍵なんてないって言ってんだろ!」と言い合いになり、結局、翌日、鍵の業者を呼んで開けることになった。
納得のいかなかった児玉さんは、何か言われた時のことを考え、念のため3階のキーボックスと鍵の写真も撮り、デジカメの画面で確認もした。
そして翌日、児玉さんは鍵の業者が来る前に再びマンションへ向かった──。
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●取材協力
株式会社カチモード(https://kachimode.co.jp/)