■人類を拒む「地上で最も過酷な無人島」
「1年のうち315日は雨か雪」
「一番近い陸地が1000㎞以上離れている」
「トラックが横転し、家の屋根が吹き飛ぶ暴風が常に吹き荒れる」
「環境が厳しすぎて流刑地にもできなかった」
「でも、ペンギンにとっては楽園w」
この地球上には、現代でもなお人類を寄せ付けないい無人島が数多く存在している。しかし、ニュージーランドと南極大陸の間の海上にポツンと浮かぶ、謎多き島「マッコーリー島」は、その中でも厳しすぎる環境から「地上で最も過酷な環境の無人島」として知られている。
このマッコーリー島は、行政区分で言えばオーストラリア領タスマニア州に属する。ただし、タスマニア島からは南東約1400kmで、オーストラリア大陸よりもニュージーランドに近い場所にある。南極大陸からも1300km離れており、ニュージーランドと南極の中間地点にある「絶海の孤島」だ。
島の大きさは全長約34㎞、幅約5㎞の南北に細長い棒状で面積は128平方㎞。わかりやすくいえば、川崎市や堺市よりちょっと狭い(10%減)ぐらいの大きさで、最高地点でも400mほどしかない平たい島だ。また、島にはほとんど木が生えていないのだが、それもこの島のムチャクチャな自然環境が理由だ。
中二が考えたレベルのムチャクチャな自然環境
マッコーリー島の最大の特徴は天候の悪さ。雨や雪の日が非常に多く、1年間のうち315日は雨または雪が降っている。日本では「1カ月に35日雨が降る」といわれる屋久島でも実際に1mm以上の雨が降る日数でいうと年間160~200日なのだという。そんな屋久島と比べても、マッコーリー島の異常さがよくわかるだろう。
さらに、この島の異常さを特徴づけているのが暴風だ。島は南緯50~60度の海域にある(正確には南緯54.63度)のだが、このエリアは平均風速30m/s、高さ7~8mの波が荒れ狂う暴風地帯で、船乗りたちからは「狂う50度(Furious Fifties)」(注1)恐れられた場所だ。
注1/邦訳はこの表記が多いが、Furiousは「激烈な、荒れ狂う」の意味なので「荒れ狂う50度帯」あたりが妥当かと
風速30mと聞いてもピンとこない方もいるかもしれない。気象庁の定義(注2)では最高ランクの「猛烈な風」とされ、暴風警報が発令されるレベル。しかもあくまでこれは「平均風速」で瞬間的にはその倍、つまり風速60m/sに達し、ほぼ災害級。走っているトラックは横転、自販機は転倒、家の屋根が吹き飛ぶクラスの暴風をイメージしてほしい。それがマッコーリー島では「日常」なのだ。
注2/気象庁HP「天気予報で使われる用語/風」より
しかも、南極に近いため(といっても1000㎞は離れているのだが)、冬の時期は暴風雪が吹き荒れ、海は海氷で閉ざされる。もう中二病が思い描く「ボクの考えた氷の魔王国」みたいな環境だが、いったいぜんたい誰がこの島に目を付けたのか? お次はマッコーリー島の歴史を見ていこう。