都市伝説ファンであれば、「エリサ・ラム事件」というワードを、一度は耳にしたことがあるのではないだろうか? あるいは、怯え切ったアジア人女性がエレベータに駆け込み不可解な行動を繰り返す、粒子の荒い不気味な映像を……。

 

セシル・ホテルの怪事件の関連写真(7枚)

 

 2013年1月31日、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスを訪れていたカナダ人学生エリサ・ラム失踪した。家族からの捜索願を受けたLAPD(ロサンゼルス市警)は、情報提供を求めるビラを配るとともに、ホテルのエレベータに乗る彼女の姿が映った監視カメラの映像を公開した。

 

エリサ・ラム

ロサンゼルス市警が公開した監視カメラの映像(抜粋)。身を隠すようにしている赤い服の女性がエリサ・ラム(動画はリンクより)

画像:LAPD,Public Dommain

 この動画に映る彼女の奇妙な行動は、観る者に不穏なものを感じさせる不気味なものだった。そして、その予感のとおり、失踪から約3週間後の2月19日、彼女は宿泊していたホテルの屋上の貯水槽内で全裸遺体となって発見された。

 

公開された実際の映像

 

■不気味な事件の現場は「呪われたホテル」

セシル・ホテル
ロサンゼルス中心街ながらスキッドロウ(貧民街)と呼ばれるエリアにあった「セシル・ホテル」 画像:Jim Winstead, CC BY 2.0 , via Wikimedia Commons

 LAPDにより事件は「偶発的な溺死」と結論づけられたが、謎めいた状況から多くの議論を呼んだ。この事件を調べるYouTuberが数多く動画を投稿し、事件の真相をめぐって自身の考察を主張。「事故や自殺ではなく殺人事件」だと訴えるものから「政府の秘密を偶然知ったため消された」などの陰謀論まで、YouTubeの盛り上がりとともに、エリサ・ラム事件はネット上で有名になった。なかにはエリサ・ラム事件をきっかけに考察系YouTuberに転職してしまった人もいるほど、世間の注目を集めたのだ。

 

 実は、この「エリサ・ラム事件」の舞台となったセシル・ホテルは、そもそもいわくつきの呪いのホテル」として知られた場所だった。

 

 ラムは香港からカナダに移民した両親の娘で、鉄道やバスを使って一人旅をしていた。そのため、このホテルに関する不吉な噂を知らなかったのかもしれない。また、後述する”ある事情”により、自分が呪われたホテルに踏み込んでしまったことに気づいてなかった可能性が高いのだ。なお、数々の謎や陰謀論を生んだこの事件は、Netflixでドキュメンタリー映像が制作された。

 

Netflix『事件現場から: セシルホテル失踪事件』予告