■『天空の城ラピュタ』のドーラにモデルがいた!

ドーラ一家

肝っ玉かあちゃんにして空中海賊団のボス、ドーラには実在のモデルが存在した!?

画像:スタジオジブリ/「天空の城ラピュタ」

 テレビで公開されるたびに「バルス祭り」が起こることで有名なジブリの傑作映画「天空の城ラピュタ」。その登場人物の中でも人気なのが、主人公たちとからむギャング団の女親分にして肝っ玉母ちゃんのドーラ。彼女の名台詞(?)「40秒で支度しな」はネットミームとして知れ渡っている。

 

 そんな彼女が率いるのが、3人の息子たちを中心にした空中海賊「ドーラ一家」。さらに、80年代を代表する大ヒット冒険映画「グーニーズ」にも、母親と三人息子のギャング団「フラッテリー一家」が登場するが、この2つのギャング団のモデルになったのが、実在した伝説の女親分、マー・バーカー(Ma Barker)こと、ケイト・バーカーと息子たちだ(※1)

※1 ドーラのモデルに関しては、宮崎監督や実弟は彼ら自身のお母さんだったと語っているので、これはあくまで編集部の推測です。悪しからず。

 

ドーラのモデル?マー・ベイカー関連写真【8枚】

 

■実在した女親分「バーカーかあちゃん」

マー・ベイカー

伝説の「血まみれギャングママ」ことマー・ベイカー(本名ケイト・ベイカー)。その実像とは?

画像:Public Domain via Wikimedia Commons

 舞台は20世紀初頭のアメリカ中西部。銀行・企業の倒産、失業が連鎖し、不況の世の中になった大恐慌時代だ。ケイトは低賃金労働者の夫とのあいだに4人の息子を出産。息子たちは大きくなるとひき逃げ、強盗、殺人など重大な犯罪を起こすようになった。

 

 1927年、長男のハーマンが強盗の際に警察と衝突して重傷を負い、起訴を逃れるために自殺。残りの3人の息子もそれぞれ逮捕されてしまった。しかも、息子たちが刑務所に入っているあいだに、ケイトは夫に逃げられてしまった。失意の中、彼女はアーサー・W・ダンロップという無職男と暮らすようになった。

 

 1931年、四男のフレッドが刑務所から釈放され、受刑者仲間アルヴィン・カーピスと「バーカー・カーピス・ギャング団」を結成。三男のアーサー「ドク」バーカーも加わり、メンバーは総勢25人までに拡大。銀行強盗、身代金目的の誘拐、殺人など悪事の限りを尽くした。「バーカー・カーピス・ギャング団」にはアル・カポネが率いたマフィア「シカゴ・アウトフィット」のメンバーも入れ替わりで参加していたという。

 

 ケイトはダンロップと共に、このギャング団に参加。行動を共にするようになる。ギャング団は各地で悪事を働き、有名になった。ケイトは次第に母親(ママ)を意味する「マー」のついた「マー・バーカー」と呼ばれるようになる。日本語に無理やり訳すならば「バーカーかあちゃん」といったところだろうか。

 

■伝説のFBI長官も恐れた女ボス?

エドガー・フーヴァー

マー・バーカーたちを追っていた頃のエドガー・フーヴァーFBI長官。

画像:Public Domain via Wikimedia Commons

 故郷のミズーリ州を皮切りにアメリカ中西部を転々とし、銀行強盗などの凶悪犯罪を繰り返したケイトたちギャング団。後にミネソタ州セントポールを拠点に「アメリカ史上最悪の汚職警官」と呼ばれた、セントポール警察署長トーマス・アーチボルト・ブラウン(通称・ビッグトム)と手を組み、誘拐稼業を中心に荒稼ぎすることになる。

 

 この頃のバーカー・カーピス・ギャング団の暴れっぷりは、司法当局から「パブリック・エネミー(社会の敵)」と名指しされるほどで、 FBI(米連邦捜査局)の初代長官ジョン・エドガー・フーヴァーは彼女について後に、

 

「過去10年間で最も残忍で危険、そして機知に富んだ犯罪者の頭脳」

 

 と評した。40年近くにわたりFBIのトップに君臨し、数々の犯罪者を狩ってきた伝説のFBI長官がこれほど恐れた意外な理由は後ほど触れる。

 

 こうして、汚職警官と手を組み、やりたい放題だったバーカー・カーピス・ギャング団だったが、その最期はあっけないものだった──。