■不気味な男が放った言葉は…
すると、男たちのうちの一人が突然、笑いながらこう言った。その声は、まるで人間のものではないような、耳障りで底冷えするような響きだった。
「なんだ、男か」
「じゃあ、カネだけ取ろう(笑)」
その言葉と同時に、ロットゥーの内部が一気に真っ暗になった。ヘッドライトも、車内の灯りも、ボスのスマホすら、すべて消えた。そして──、
ドン! ドン! ドン!!
真っ暗闇になった瞬間、車体を叩く音はいっそう激しくなった。まるで、石か何かで車体を叩き壊そうとするように。ボスはその音に込められた“悪意”に怯え、アタマを抱え込むように耳をふさぎながら意識を失ってしまった……。
■村で耳にした奇妙な強盗の噂
「……ここはどこだ?」
ボスが目を覚ますと、そこは近くの村だった。どうやら村人に助けられたらしい。見つけられたとき、ボスは道路脇に寝かされていたようで、あたりはすっかり明るくなっていた。
「一体、どういうことだ…?」
ボスは混乱し、何が起こったのか理解できなかった。「疲れすぎて悪夢か幻覚でも見たんだろう」と自分に言い聞かせたが、不気味なことに、フロントガラスのひびと屋根の上の大きな石は、昨夜、目撃したままの状態だった。
その後、ボスが地元の人々から聞いた話によると、深夜に通りすぎるロットゥーに石を落として停車させ、強盗を働く事件は確かに存在していた。ただ、その話には奇妙な「続き」があった。
その強盗たちは、数年前に住民たちに追い詰められ、逃げ場を失って事故死したというのだ。それ以来、彼らの幽霊が同じ手口でロットゥーを停め、乗客を襲うという噂が広まっているという。
はたして、ボスがその夜に見たモノは、生き残りの強盗だったのか。それとも、事故死した彼らの幽霊だったのか――真相は闇の中である。
■あの夜の不気味な笑い声が甦る
それ以来、彼らの幽霊が深夜のバスを襲うという噂が広がり、ロットゥーの運転手たちのあいだでは、「石を落とされたら振り返るな」と語り継がれているという。
ボスはその後もロットゥーの運転手を続けたが、深夜に車を走らせることは二度としなかった。そして、あの夜を思い出すたびに、男たちの不気味な笑い声が、耳の奥から響いてくるのだという。
「なんだ、男か」
「じゃあ、カネだけ取ろう(笑)」
彼らが言い放ったその言葉を何度も思い返してしまう。もし自分が女性だったら、どんな目に遭っていたのか――頭をよぎるたび、ボスは背筋が凍るのを感じるのであった。